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ユングを詠む_(021)『タイプ論』から『タイプの一般的説明(外向型)』

『タイプ論』から『タイプの一般的説明(外向型)』

『タイプ論』https://amzn.asia/d/2t5symt [3]の第10章『タイプの一般的説明』の紹介と感想の続きであるが、今回から何回か『外向型』の話になる。

1.     イントロ


 先回は、『一般的な構えのタイプ』、別名『一般的態度』
「外向(E; Extraversion)⇔内向(I; Introversion)」の話で、外向と内向の特徴を上げて終わった。

今回は、外向の特徴と外向の人の注意点(ネガティブっぽい)について詳述されているパラグラフになる。

 症例のような記述が散見されるが『タイプ論』が上梓された頃のものであり現代のそれとは知見が違うことは認識が必要である。

2.[再掲]外向と内向の特徴

内向の特徴。

 内向型の人は客体を無視する態度をとる。すなわち彼がいつも配慮しているのは結局のところ客体からリビドーを奪い取ることでありそれは、まるで客体が優位に立つことを防がねばならないかのようである。

閉鎖的で心の内を明かさない、しばしば内気な性格の人々

[3]p354

外向の特徴。

外向型の人は客体に対して積極的な態度をとる。彼は客体の意義を高く評価しており、そのため自らの主観的な構えをいつも客体に従って方向づけ、それと関連づける。

要するに彼にとって客体は最高の価値を持っており、このためその重要性が高まらざるを得ないのである。

開けっぴろげで愛想がよく概して陽気であり、少なくとも親切で人好きのする性格の人々がおり、この人は周りの誰とでも上手に付き合い、例え争うことがあってもその人との関係を断ち切ることなく、お互いに影響を与えたり受けたりする

[3]p355

もう少し具体的なケースが追加で説明されていた。
 
世間の人が皆賞賛しているという理由で新進のミュージシャンを賞賛(外向)。
そのミュージシャンが自分の好みに合わないから賞賛しない(内向)。
 
とある評論家があるお酒を絶賛するので美味しいと勧められたので他人に勧めている。しかし勧めている本人はそのお酒の味がいいのか悪いのかわからない(外向)。
その評論家の好みと自分の好みが違うので絶賛しない(内向)。
 
こんな具合となる。
 
重要な決断や行動が主観的な意見ではなく客観的な状況に左右される場合、これを外向的構えと呼ぶ。これが習慣的になったものを『外向的タイプ』と呼ぶというわけだ。

3.『外向型』にとって正常な状態とは


 よく読むとこのパラグラフでは、あまりメリットは書かれていない。これぐらいである。

規制の状況に対してたいした軋轢もなく順応しており、しかも客観的に存在している可能性を成し遂げること以外に何の要求もない状態。

[3]p356

(悲観しないでほしいが、変革を求めて外界に働きかけをする外向型もある。まだ、触れられていないだけだ。)

4.外向型の注意点
4.1主体としての構えが弱い
 重要な決断や行動が主観的な意見ではなく客観的な状況に左右される場合、これを外向的構えと呼ぶ。これが習慣的になったものが『外向的タイプ』。
 
 だから、客観的状況やその要求に直接応える形で考え・感じ・行動してしまうように生きているので、主体の主観的意見よりも客体の方が意識を決定する因子として大きな役割を演じている。
 
主体的な意見や考えを持つことが稀になり、客体に飲まれてしまい支配される可能性が高い。客体が破滅の方向に進んでいても気がつかないとか意見が言えない状態に陥りやすいという。
さらには客体・外界に振り回されて過労状態になりやすいという傾向があるようだ。
 
こんなふうに書かれている。

客観的要因によって強く影響されている状態は、一見したところ生存条件に完全に・あるいはまったく理想的に・適応しているように思われるかもしれないが、決してそういうことを意味しているのではない。
(中略)

客観的な条件は時代や場所によっては異常になることもありうるのである。こうした異常な状況に順応している個人は、たしかに周囲の異常な流儀とうまくやっていくが、しかしそれは同時に普遍的妥当な生の法則という見地からすると、周囲の人々全員と共に異常な状態におかれているのである。
(中略)

しか最後には普遍的な生の法則に背いた罪によって周囲の人々全員と共に破滅してしまうだけである。

[3]p359-p360

二つの世界大戦を欧州で体験したユングにとってこれが何のことかわかるでしょう。

そして身体と精神面での健康についても述べている。

外向型の人が持っている危険は、客体の中に引き摺り込まれてしまい、その中で自分自身をまったく見失ってしまうことである。この結果生じる機能的(神経的)障害ないし現実の身体的障害は補償的な意味を持っている。

というのは、このために主体は心ならずも自重せざるを得なくなるからである。

(中略)

たとえばある歌手が急に名声が高まったため、自分では応じきれないエネルギー支出を迫られる危機に瀕した時に、神経性の故障のために突然高い声が出なくなったりする。

ひどく貧しい境遇から出発して、非常に影響力のある前途洋々たる社会的地位にまで駆け上がってきた男の場合、心因によって高山病のあらゆる症候を呈することがある。

怪しげな女性を女神のように崇め奉り過大評価している男が、彼女といざ結婚する段になって神経性の食道痙攣を起こし、そのため1日の2杯のミルクしか飲むことが出来ず、しかも一杯飲むのに3時間もかけなければならなくなる。このため彼は許嫁に会いにいくことが出来ず、静養するだけで手一杯になってしまう。

自力で途方もない事業を拡張したが、これ以上仕事の重荷に耐えら得なくなった男が、神経性の渇水症に襲われ、その結果急速にヒステリー性のアルコール中毒に陥ってしまう、といった具合である。

[3]p361

ユングによると外向型にもっとも見られる神経症はヒステリーとのこと。当時の知見なので今とは違う可能性が高い。あくまで参考として欲しい。

典型的なヒステリーの特徴は、常に周りの人々との過剰な関係(ラポール)であり、また周囲の状況に猿真似もいえるほどに迎合しようとする。
(中略)
ヒステリーの根本的特徴の一つは、常に他人の関心をあつめよう、周囲に感銘を与えようとする傾向である。これと対になっているのが周知のように暗示を受けやすいこと、すなわち他人によって影響を受けやすい。

また、外向型の特徴はヒステリー患者の話好きとしても表れており、これは時として全くの作り話を話すまでになり、このためにヒステリー患者は嘘つきだと非難される。

いわゆるヒステリー「性格」は当初の正常な構えが誇張されたものであるが、しかし、無意識の側の補償的な反作用によって、すなわち過度に外向している心的エネルギーが身体の障害によって無理やり内向させられることによって複雑なものとなる。

この無意識の反作用によって生じる症候は以上とは異なった範疇のものであり、むしろ内向的性格を持っている。このうち特によく見られるのは、空想活動が病的に高まった状態である。

[3]p361-p362

(かなり、外向型に手厳しいことが書かれているが、自分の考えや直観を持って外界に働きかけていくタイプの外向型もあるので落胆しないでほしい。)
 
今回はここまで。

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参考文献[2] MBTIタイプ入門 タイプダイナミクスとタイプ発達編https://amzn.asia/d/70n8tG2
 
参考文献[3] 『タイプ論』https://amzn.asia/d/2t5symt
 
参考文献[4] ユングのタイプ論に関する研究: 「こころの羅針盤」としての現代的意義 (箱庭療法学モノグラフ第21巻) https://amzn.asia/d/aAROzTI
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こころざし創研 代表
ティール・コーチ 小河節生
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