見出し画像

親父はターミネーター?

先日、今は映画館が指定席になって便利だという話を20代の仲間にぽろっとこぼしたらずいぶん驚かれた。

そりゃそうだよね。

僕が高校生の時だから20年と少し前まで映画館は人気作であれば立ち見も辞さない覚悟で足を運んでいた。

だから行列が長いときはそのまま次の上映まで待っていたこともある。

毎年、友だちとゴジラを観に行くのが恒例行事だったので全員トランプやウノをカバンに入れておくのがルールになっていた。

気づいたら後ろに並んでたぜーんぜん知らない人も混ざってたりしてあれはあれで面白かった。

みんな暇だし同じゴジラファンだから仲間意識というか待つことすらもエンタテインメントで気にならなかったなぁ。

ちなみに僕が生まれてはじめて観た映画は1984年に公開されたゴジラ。

親父が知人の見舞いついでに僕を連れて行ってくれた。

が…3歳の僕にはなかなか怖い作品だったからほとんど覚えていなかった。

なぜか逃げ回る武田鉄矢と三原山の火口に落ちていくシーンだけ脳裏に焼き付いているヘンテコリンな僕の記憶力。

それから7年後。

僕は親父とターミネーター2を観に行った。

うちの親父は細かいストーリーものより爆発!銃撃!カーチェイス!ベイヘム!!みたいな作品が好きなので自分が観たかったというのもあったと思う。

が、しかし。

ターミネーター2というのは1991年の興行収入ランキングでトップになったくらいなので誰もが見たい作品の一つでもあったと思う。

見たことないくらいむっちゃんこ並んでたのだ。

親父は行列とか混雑が大嫌いなので僕は子ども心に「お父さん…帰るって言わないかなぁ…」と不安になっていた。

けれどこの日は「自分も観たい」という親父の意志により並ぶことができた。

けど座ることはできなかった。
いわゆる立ち見。

仕方ないので最後列で手すりによりかかりながら見始めることにした。

ちなみにターミネーター2の上映時間は2時間半くらいある。

大人だってなかなかしんどい状態。

さらには少し手すりが高いので腕も疲れてくる。

そんなときだった。

親父は片膝を僕の椅子にしてくれた。

目の前の段差に足を乗せて即席の椅子にしてくれたのだった。

ときおり足を入れ替えることはあったけど最後まで僕は親父の膝にまたがるようにしてターミネーター2を見終えた。

普段は寡黙な父親だけど劇中で使われていた最先端のCGに衝撃を受けたようで帰り道は珍しく興奮してたくさん話をしてくれた。
「ヘリからヌルっと入ってきたのはスゴかったなぁ」
「凍ったあとに復活するとは思わなかったなぁ」とか。
ちなみに晩ごはんでオカンにも同じ話をしていた。
「すごかったんだよ、ヌルっとしてて」
…これじゃまるでウナギですね。

この日以降、僕はずっと膝の上に座らせてくれた親父ってシュワちゃん扮するT-800並にタフなのかもしれない…と思うようになった。

もっとも歳を重ねるごとに頭頂部が光沢を帯び始めたので人間で間違いないです。

若い頃は柔道や登山で下半身は鍛えられていただろうし毎日、殺人的な通勤ラッシュに耐えているんだから頑強だったんだろうな。

その成果として僕の椅子になってくれた。

そのタフさと優しさはシュワちゃんを上回ってると思うくらい優しくしっかりとした椅子だった。

ここ数年は帰省のたびに少しずつ老いていく親父と何か映画の思い出を作っておきたいと思うのですが…
親父と映画の好みが違うので四苦八苦しています。
なんとか実現したいな…

ではではお約束のアディオース!


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?