ストレイトアップ 番外編
もともとストレイトでも飲みやすいお酒を紹介することを目的としていたので、ウイスキーなどは紹介する予定はなかったのですが、先日見た映画が良かったので、番外編として書かせていただきました。
洋画でバーが登場すると気になってしまいます。大好きなのはウイスキーのストレイトを注文するとオールドファッショングラス(ロックグラス)にそのままドバドバと注がれるシーンです。日本では見た事ありませんが、これに憧れてしまいます。
最近見たグリーンブックという映画にもウイスキーのシーンが出てきました。
ちょっと本編に触れてしまうので文章を読んでいただく前に映画をご覧ください。でも、これだけは言わせてください。
「フライドチキンもしくは唐揚げなどのご用意を‼︎」
………どうでした、えっまだ見てない??
…………そろそろ……
…………見終わりましたかね?
…………ではでは始めましょうか。
ご覧の通り黒人ピアニストがイタリア人のドライバーと共にアメリカ南部の演奏ツアーに出かけるロードムービーです。
ロードムービーにトラブルはつきものなのですが、珍道中というほどのドタバタ感はなく小さな出来事を淡々と描いていることが印象的でした。
大きなアクシデントはドクが捕まってしまった時とトニーが警官に暴行を振るってした時くらいでしょうか。暴行の件も当時では日常茶飯事の差別とトニーならやりかねない(むしろスカッとする。でもやっちゃダメよ)のでビックリする出来事でもないですね。
小さいの出来事の積み重ねによって物語が紡がれてゆく。磨きをかける時に大きな番手のヤスリから小さな番手のヤスリに移すような丁寧さ。結論だけ拾っても良いお話なのですが、その工程を目の当たりにすることでより輝きが増す。そういった点でも見終わった後の充実感は格別です。
しかし、最終的に美味しいところをもって行ったのはトニーのパートナーですよね。
2人と1本の旅
この映画ではウイスキーを飲んでいるシーンを頻繁に見かけます。よく見ると同じ銘柄です。
旅に出るときに用意させたり、黒人専用のホテルで1人、ホテルのロビーらしき場所、演奏場所を飛び出したバーなどで登場します。セリフでも銘柄をハッキリ言っていたり。
実際に作品の元ネタになった人物の好みだったのかもしれませんが、それだけではない因果があるのではないでしょうか。ラベルもかなり分かりやすい写り方をしていますし…などと悪い虫が疼き出してしまいます。
カティサーク
映画に登場する黄色いラベルのウイスキーはカティサークという銘柄です。聞き覚えのない方も多いかもしれませんが、実はスーパーに置かれています。
いわゆるブレンデッドウイスキーと言われるジャンルです。ジョニーウォーカーやデュワーズのように複数の蒸溜所で作られたウイスキーを配合して作られます。
ブレンデッドウイスキー(正確にはバッテッド)は今よりもずっとお酒の味が安定していなかった頃に様々な年代のウイスキーを掛け合わせることで、一定の味に近づけることによって人気を博しました。
話を戻してカティサークというウイスキーの特徴はラベルのイラストです。カティサークという名前も実在した船からとっています。この船は帆船として紅茶や羊毛の運搬をしていました。
もう一点、個性的な特徴は真っ黄色のラベルです。どうやら黄色いラベルは印刷ミス(発注ミス?)によるものだったようです。しかし、そのラベルが目立って販売は好調だったようです。
そんなウイスキーのエピソードと映画のストーリーが重なる部分が見えてきます。
グリーンブックに緑のボトル。
異なる性質を持つものブレンドにより生まれた味と物語。
運ぶものは一方は上質な音楽(ピアニスト)であり、一方は芳醇な紅茶。
旅のアクシデントは嵐の中の航行。
型破りな黄色いラベルは、差別や常識に惑わされない羅針盤。
もしかしたらもっと違う共通点もあるかもしれません。何度か見返しながらいろんな発見を楽しみたい作品ですね。それもまた注いだ後に香りの変化を楽しむウイスキーに掛かっていたり……さすがにちょっと伸ばしすぎですね…
カティサークの楽しみ方
劇中ではストレートが基本ですが、慣れない方はハイボールがいいでしょう。
香りに特徴のあるお酒だなと思っています。ハーブの乾いた緑とアマニ油のような香り、ほんのりピート香(燻製、消毒のような系統の香り)。ちょっと一般的なウイスキーよりも植物の香りが中心なので薬草酒っぽい一面も感じさせます。ピリッとくる辛さと相まってちょっと飲みにくさがあるかもしれません。
その飲みづらさも炭酸と合わせると口当たりはマイルドになり、程よいキレをもたらしてくれます。シュワシュワと弾ける香りはハッカのような清々しさ。劇中は冬ですが、夏にも美味しい一杯ですね。
映画を見ながら飲むのもいいですし、お酒を飲みながら、語り合ったり、思い出したりするのも有意義ですね。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
このシリーズは正真正銘こちらで終わりですが、またこう言った記事を書ければ嬉しいです。改めて読んでくださった皆様と素晴らしい作画をしてくださったPHIさんに感謝いたします。
素敵なイラストの作家さん
PHIさん
大阪出身コリアン3世イラストレーター兼アーティスト、言葉や文章から大きくイメージを膨らませて描く事を得意とする
2020年3月 108にて初個展<PHEWTURE>を開催
Twitter : https://mobile.twitter.com/kim_yangphi
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