ストレイト・アップ! ポム・ド・ノルマンディ
氷を入れない飲み方
バーでは、欠かせない「氷」。当たり前のように季節を問わず冷凍庫で作れれば、コンビニでも売っている。
ふと、
「道端で氷がはっているのを今年は見たっけ?」
「氷ってそんなに身近じゃないかも…」
一回気になると日常で氷を使えることが、不自然に感じるようになりました。
腐敗の奇跡
冷凍庫も冷蔵庫も無い時代には、腐敗がもっと日常的に起きていたでしょう。お酒の起源も自然に溜まった果汁に天然の酵母が入って発酵し、森の中に甘美な香りが立ち込めたとか、それを飲んだ動物が酔っぱらったとか。
発酵は、素材の味や香りに変化を促します。それはかわいい印象の果物の中で眠っていた悪魔を呼び起こすように。
特にリンゴには騙されてはいけません。
魅惑の果実
リンゴと言えば「真っ赤なほっぺ」というような素朴なイメージが強いですが、よく噛んで食べてみるとちょっとお酒のような大人な香りが現れます。焼きリンゴやアップルパイなど、火を加えた時も他の果物にはない香気が感じ取れます。
大昔の人たちも知らず知らずのうちにこの香りに魅了されていたのでしょう。アダムとイブのちょっとエッチなエピソードにも影響があったのかもしれません。
ポム・ド・ノルマンディ
なかなかに罪深い果物のリンゴですが、発酵、蒸留、熟成とさらに罪を重ねることで悪魔がひょっこり顔を出します。
ちなみにリンゴを発酵させるとシードル(サイダー)、蒸留、熟成させるとカルヴァドス(アップルブランデー)、蒸留後リンゴジュースを加えてから、熟成させるとポム・ド・ノルマンディという別のお酒になります。
ポム・ド・ノルマンディはブランデーに比べて抑えられた度数と甘さの影響で飲みやすいですが、炭酸がなく甘さもしっかりあるのでシードルほどアッサリしていません。
夜の共犯者
オススメはデュポンのポム・ド・ノルマンディです。他社製品よりもやや大人な色気が強いように思われます。単調な甘さにはならず、甘さの奥に現れる苦味や鋭利な辛さは、ついつい踏み込みたくなる悪事のようです。
まるで
「声をかけたのは私。でも、やったのはあなたでしょ」
と、共犯どころか実行犯に仕立て上げられてしまうような危険。
氷で薄めずに罪の味を楽しんでいただきたい。
おまけ〜グラス選びのコツ〜
最後に前回ふれたグラス選びで気をつけるポイントを書いておきます。実際に見て買うことが一番なのですが、諸々の理由で通販になってしまうことが現実ですね。失敗しないグラス選びで注意してほしい数字が2つあります。
大切な数字は満水容量と高さです。
満水容量
写真の印象で買ったら、大きすぎたり、小さすぎたり。満水容量が分かるとサイズ感を掴みやすくなります。出来れば事前に家にあるカップなどの容量を計量しておくと良いでしょう。
満水容量は擦り切れで何cc入るかです。リキュールの場合は一杯60〜70cc注ぐくらいが丁度いい良いので、グラスは100〜180ccがいいでしょう。入れた時にグラスの7分より上まで注いでしまうと不安定で飲みづらくなります。
容量の余裕は見た目やバランスだけではなく、香りが充満するスペースとしての役割もあります。このスペースは、注いでから時間をおいた時に良い仕事をします。
高さ
高さはどれがお勧めというよりは家の棚のサイズに合わせて買いましょう。買った後に収納できないのは悲しいです。
また、背が高く細身になると一口に入る量が増えます。背が低く膨らみがあると一口の量が減ります。見た目と楽しむペースで選んでみましょう。
お気に入りのグラスと特別な時間をお過ごしください。
素敵なイラストの作家さん
PHIさん
大阪出身コリアン3世イラストレーター兼アーティスト、言葉や文章から大きくイメージを膨らませて描く事を得意とする
2020年3月 108にて初個展<PHEWTURE>を開催
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