君は僕のあかり
あるところに、女の子がいました。生まれた時から1人です。小さな、小さな部屋にいます。何年も前からいるのかそれとも昨日からいるのか分からなくなります。
眠っています……。深く、深く、まるでお母さんのお腹の中にいる時とおんなじ、背中をまるめてひとりっきりで外で何が起こっていても耳を塞いで気付かないふり。
トントン。小さな音がしました。「出ておいで、もう安心だよ」外は寒い冬なはず、きっと凍えてしまう。安心なんてない、絶対にない。女の子はまた耳を塞いで身体を硬くして眠ります。
ある日のこと、起きるといい香りがします。ドロドロの黒い匂いじゃありません。お日さまの匂いでしょうか、光が射したのは何時ぶりでしょう。そっと目を開けると、
手のひらに桜色の花びらがふわり。上を見上げると、「やっと、気付いた」男の子が手を振ってにこり。……パチン!!指をならすと暗かった部屋に灯りがつきました。
「さぁ、今日は花びらで冠を作ろう。クローバー、タンポポもあるよ」そう言うと、両手一杯に抱えた花々を手のひらにホワンとのせて頷きます。いい香り……。
「一緒に遊ぼう。僕は君が大好きなんだよ。さぁ、笑って。泣いたら笑うんだ」花々で作った酷く不恰好な冠を女の子の頭の上にのせ、スーーっと消えていってしまいました。
部屋はまた暗くなってしまったけれど、隅を見ると小さな灯りがポワッとついてまた消えて、またポワッっとついて。女の子は眩しくなってしまって怖くなってしまって、
「眩しいよぉ……」涙がポロポロ溢れ床にもポロリ。頭の上の冠をおろすと花びらがたくさん落ちて涙と一緒に床へ沈んでいき、滲んで消えていってしまう。なくなってしまう。
どのくらいの時間がたったのでしょう。膝の隙間から床を見ると、桜色の花びらがクローバーがタンポポが絨毯になっています。ふわ〜〜〜、女の子はお花の絨毯にのり光の方へ、灯りが燈る方へ。
「待っていたよ」冠をくれた男の子です。もう心配しなくていい、君は好きなことをしていいし嫌なことは嫌と言ってもいいんだよ。今ここにいるね、それだけで価値があるんだ。
君は僕のあかり。僕は君のあかりになれる?
ナァーーーッ。
薄いクリーム色に焦茶色の縞模様、1匹の猫が足元に座り見上げている。グリーンに縁どられた黒色のくりっとした瞳だ。君がみせたのかな?思わず抱き上げたら離したくなくなっちゃったね。
「うちにくる?」
猫の世界には秘密結社があるのです。今回も小さな男の子のママ探しに成功しました。ヤッタネ!!
(1048字)
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