宇宙と孤独は分け合えるのか。/Outer Wilds
※この記事はゲームストーリーのネタバレを含みます※
「Outer Wilds」というゲームをクリアした。新人宇宙飛行士として惑星を探査するゲームだ。主人公が目覚めてから22分を過ぎるとこの宇宙は消滅してしまう。その22分間を何度も繰り返し、このループから抜け出すことが目標だ。それを知るためには、この宇宙に隠された秘密を知らなければならない。
このゲームは友人に勧められて始めた。宇宙もSFもループもあまり触れてこなかった私にとっては全てが珍しく、全て対して無知だった。
どうやらこの宇宙には主人公たちとは違う種族が暮らしていたらしく、彼らの痕跡を辿りながら何が起こったかを推理していかなければいけない。幸い、私は深読みが得意だった。考えるだけならできる。新しい情報が手に入れば今までの記録を見直し、宇宙が消滅するのを見届けてはまた惑星へ飛び立つ。その地道な調査は自分に合っていた。宇宙飛行には向いていなかったため、探査艇と主人公の足は数えきれないほど壊してしまったが。
このゲームに出てくる主人公たちの種族は殆ど皆宇宙に希望を抱いている。未知の惑星、途絶えた種族の残した文書、誰も到達したことのない場所。果てなく膨張する宇宙に対しての憧れを主人公は託される。
一人用の探査艇に乗り込めば、そこは孤独な星々と闇しかない。シグナルスコープを覗けば口笛やバンジョーの音。誰もが一人で、誰もが一人ではない。未知を解き明かしたいと願うのは自分だけではない。暖かな孤独がそこにはあった。
しかし、未知の輪郭をなぞっていくと、この宇宙の終わりが止められないものだとわかっていく。「宇宙の眼」から発された一瞬の信号。それを捕まえてしまった種族が滅んでいく様を追っていたはずなのに、自分たちが住んでいるこの宇宙の一部が太陽と共に消え去ることが確定していることに気付いていく。
それでも私はこの宇宙船に乗ることを止められない。滅んだ種族から引き継いだ知識と共に、「宇宙の眼」を見届けなければいけない。信号に意味はないのかもしれない。孤独な叫びかもしれないが、小さな種族を脅かす気まぐれだったのかもしれない。だが私はそれを追わなければいけない。誰かに駆り立てられた訳ではない。自分の死は変えられない。ならば、私は先人たちに倣ってこの宇宙の一部として死んでしまわなければいけない。自分が生きた意味を、そして死ぬ意味を見出さなければいけない。
私が辿り着いたエンディングは「船」だった。
宇宙の眼へと着陸し、宇宙の消滅を仲間たちと見届けた。もうその宇宙に自分たちはいない。しかし、爆発の衝撃でひとかけらでも生き残っていたら。文書の一部が運良く何処かの惑星に流れ着いたら。自分が流れ星になれたのなら。
それが、自分と仲間たちが生きていた証になるのだと思う。それがもし誰にも観測されなかったとしても、私はこの宇宙で34時間と22分生きていた。それを否定することは誰にもできないだろう。
宇宙に出れば皆孤独だ。口約束も紙面上の契りも全て意味をなさなくなる。引力によって引き剝がされないのは自分自身だけだ。それに慣れたと思っても、シグナルスコープを覗くことは止められない。
宇宙よ、君の孤独と僕の孤独が交わりますように。それに意味なんてなくても、一度でも交わってしまえたのなら、後でいくらでも意味なんて作れるから。
その意味の一つとして、君にマシュマロの味を教えてあげよう。