見出し画像

転々としてみて分かった、暮らしを豊かにする「定点観測」の大切さ

思えばこの4〜5年ほど、1年以上同じ場所に住んだ経験がありません。


おそらく、意識的にそうしてきた部分は大きいように思います。純粋に「若さ」と「好奇心」を武器に、今だからこそ動ける自分の立場を駆使して「もっと知らない世界を見たい」の一心だったから。

周り(もちろん全員ではない)が「今はがんばってたくさん働いて、定年にでもなったら旅をしようかな」というのを見聞きしては「明日どうなるかもわからないのに、ほんとうにそれでいいの?」という思いでいっぱいでした。いや、です。


現に「この先やろうと思っていたことが、自由にできない」を強制されていると感じる人の多いであろう世の中、やっぱり自分の感覚に耳をすませながら生きてきてよかったな〜と思っている、というのが正直なところ。


だからと言って、このスナフキン的人生を自画自賛&誰にでもリコメンドするつもりは毛頭ありません。だってそりゃ、人の数だけ人生があって、タイミングは人それぞれ。

わたしがかつての旅で求めてきた「暮らすように旅をする」だって、現地に暮らしている人がいないと成り立たないからね。色々な生き方があって当たり前なわけです。


一方で、常々「自然と人とが寄り添う暮らし」を求めるわたしにとって、手仕事(民芸)畑、料理季節仕事は、人々の暮らしの本質を長らく支えてきた要素だと思っています。

そして、どこに住もうがゼロウェイスト(レスウェイスト?)の実践はある程度できるけれど、ステイブルに身を置いてこそ実践できることも多々ある、と学んでいるこの数年。


大好きな編み物をはじめとする「手を動かすこと」自体、どこでもできます。だから旅をしながら、違う景色を見ながらの手仕事は大好き。

でも、国内外のさまざまなな場所で、多様な暮らし方を自分なりに吸収してみて、改めて「定点観測」を通して見える世界もあるんだなと知ったのです。


それに手仕事をするにも、素材をただ「買う」のではなく、そもそもそれがどこで・誰によって・どのようにできているのか?に思いを巡らせるにつれ、いくら素材といったって何でもかんでも便利な方法で購入すればいいってもんじゃない、ということも強く思っています。

手仕事も、人の暮らしの中で生まれてきたもの。元をたどれば同じ生物であり、自然の産物。現代は国や地域を超えて簡単に手に入れられるけど、本来それがいかに不自然かという疑念から、できる限り素材から自給したいなと思ったのです。


定点観測の話に戻ると、特にその地の植生を生かした手仕事(民芸)や季節仕事、あと建物そのもの。目で見て覚えるのは簡単だけど、年によって育ち具合・実の成り具合が変わったり、気候自体も違う。

ワンシーズンの滞在だけでは経験しきれないことも、たくさんありました。


日々、ひとつの場所に居を構え暮らすからこそ、手を動かした時の感情・感触に違いを感じられるもの。


いや、前々から「どこかに腰を据えたい」気持ちがなかったわけではない。けれど、これまでは「もっと色々な場所で、知らない世界を見たい」という気持ちの方が優っていたに過ぎないのでしょう。

だけど今、ようやくそのタイミングが近づいているような気がしています。


なんでこの話を書いているかというと、最近やっとリトアニアにきて初めて、まともに人と遊んだのですが、そこで「帰ったら何をするんですか?」と聞かれたから。

今までも「ここにきた意味は確実にある。けれどこの先は日本で暮らすのが最適かも」ということは書いてきたような気がしますが、人に聞かれると改めて「あ〜帰ったら何するんだろうな、自分」という思いが出てきたのでした。


情勢を見ていて、とても日本が今平和な状況にあるとはいえないし、色々と思うところあって(わざわざこの時期を選んで)飛び出してきたのですが、今の自分が「お金が必要な社会の仕組み」そのものに疑念を抱き、資本主義社会からフェードアウトしようと試みているゆえ、ここで必死にお金を貯めてまでビザを取ろうとは思えなかったのも事実です。

お金を得るのは、最低限という意味では現行社会システムに生きる上で必須ではあるものの、やっぱり「そもそも”生きる”って何よ?」を突き詰めると、がむしゃらに働いてお金を稼ぐより、心の余白と感覚を大切にしながら、自分の力と小さなコミュニティの中で暮らすことの方が、強くたくましく、そして何より楽しく生きられるような気がして。


まだまだこの先どうなるかはわかりませんが、ちょっと思考メモ、ということで。


やっとリトアニアも日中10度台の日が増えてきて、風がきもちよいこの頃。



いいなと思ったら応援しよう!

rie nochu|sumiyas
もしわたしの言葉や想いに共感していただける方がいれば、サポートをして下さるとうれしいです。 ひとりでも多くの方へ「暮らし」の魅カを伝えるための執筆・創作活動に使わせていただきます。