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忘れられない好きだった人

教師と生徒

どんなに恋に落ちようと、超えてはいけない壁はいくつかあって、そのうちの一つに「教師と生徒」がある。

よくある恋愛小説では、先生を好きになった子が振り向いてもらおうと(大抵)勉強を頑張って、時には教えてもらって、卒業したら付き合う、みたいなことが多い。

でも私が好きだったのは、そんな恋愛小説のイケメンには程遠いような、厳しくて部活ばかりで生徒指導をよくしているような先生だった。

私の好きな先生

当時の私は、先生の魅力は私以外には知られなくていいと思っているほど夢中になって学校中追いかけまわしていた。

今思えばただのストーカーで、客観的に見れば友達にはなれないような騒ぎようと追いかけまわし具合だったと思うくらいに、何曜日の何時間目はどこで授業だからこの休み時間はここに来るはず!とか、今日は自転車あるからもう学校来てる!とか言って、先生を見つけるなり駆け寄り挨拶をして話を振るという、多忙な先生には大変ありがた迷惑であっただろうことを2年も続けていた。

先生と私は部活の顧問と生徒の間柄で、私が二年生のときに赴任した。

部活熱心で弱小校だった私たちを市大会で最高成績まで持っていった(自称)凄腕の持主だった。のちに先生は後輩たちを県大会まで連れていき、生徒の一部を県の指定選手にまで育てた。

最初はびっくりするほど嫌いだった先生をとんでもないほど愛することになったきっかけは部活のメンバーが先生を「普通にいい人」と言っていたことだった。

それまで先生のことを嫌いだと言っていた子たちが手のひら返しで肯定的な意見になったことに驚いた私は、その瞬間から先生を「自分の好きの器にいれる人」として見ることになった。部活内では女の子の集団特有の派閥とかカーストとかの意識が強く、ここで外されると部活にいることが立場上辛くなると察した私は、とんでもないスピードで先生を好きになることになった。

「いい人フィルター」をかけて覗く世界はとても色鮮やかで、何気ないその仕草さえも美しく意味があるような気がしてならなかった。

今までのあの態度はなんだったのかと私自身も不思議に思うほど、沼に落ちた私は、前述のように追いかけまわしていた。

私なりの配慮

しかし私には道徳観やら倫理観やらも備わっていたため、学校内で騒ぐ分には構わない(それもどうかと思うが)けど、それを保護者なり他校の人が見たらまずいだろうと思っていた。

もし教育委員会なんかに通報されたら先生の大好きな教員という仕事を奪ってしまう。そんなことあってはならないと思っていた。

先生は、厳しくて誤解を生みやすいタイプだったこともあり、先生は嫌われ者だった。それも結構激しく嫌われていた。

今考えれば当たり前のことを当たり前に注意しているだけなのだが、何せ中学生で思春期真っ只中。ルールなんて守ってられない!みたいな子が多く、先生はよく生徒に注意していた。

そんな中でも私は特段怒られるようなことをしないため、いつも穏やかで笑っている先生を見ていた。だから、私が好きな先生は、私以外いないと今でも思う。

学校内でも部活でも、私が「先生大好きです!」といくら叫んでも、先生は「知ってる」というだけでスルーだったが、めげない私は何度も言葉にして文字にして先生への愛を叫び続けた。

高校生になって

そして、高校生になった私は電車で通学するようになり、ほぼ毎朝先生と遭遇することになった。通勤時間と通学時間がかぶっていたのだった。毎朝のように、私が乗る電車に乗ってくる先生。「おはようございます」「おはよう」だけの会話をするのだが、私には救いだった。
私は高校でいじめられていたのだった。行きたくない学校に行けたのは、先生が毎朝いて、会えるからだった。

その後も高校卒業までほぼ毎日、なんなら卒業式の日も駅で遭遇し、高校を無事卒業できた。

卒業する少し前、私は先生から連絡をもらい、中学の部活のお手伝いに通い始めた。人数が足りないからマネージャーのようなことをしてほしいと頼まれたのだった。

私はマネージャーのような縁の下の力持ち役が得意だった。
しかも私は部活で下積みの経験が長く、試合のスコアを取りながら応援歌を歌って先生の要望に応える、みたいなことをできるタイプだった。

そこから私と先生の交わらなかった糸が交わり始めた。

交わり始めた糸

マネージャーをする対価として食事に行くようになったのだ。

もちろん、一対一ではなく他の先生も交えて3人での食事だったが、それでも私は十分だった。
「となり、座れよ」と言われるだけで良かった。

計10回ほど食事に行き、時には食事を分けっこしたし、本気で教育を語ってもらったこともある。私は年上の方と接すると妹のように甘えてしまう癖があるために、何もしなくて少々怒られることもありましたが(笑)

しかし、私は大学に入り、先生は異動となり、会わないことも増え、私は大学で友達もできたしバイトも始め、忙しい日々が続いた。

一度交わった糸が解けてしまった。

今の私

今は、連絡も取らないし会わないでいます。

会ったらきっと思い出してしまうから。

それでも先生の住む町や思い出の場所に来ると思い出してしまうし、今でも夢に出てきます。

私は今、先生に「成長したな」と思ってもらえるような人になっているでしょうか。記憶の片隅にでも思い出す生徒になっているでしょうか。

私は元気です。先生ほど頭はキレないし変わらず感情が溢れて顔に出やすい素直なままですが。先生が健康で、少しでも笑えて、安心して眠れるように祈っています。

先生、私は今でもファンですよ!

#忘れられない恋物語

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