「2.5次元ミュージカル」を東宝系ミュージカルオタクが観に行った話
わたしのミュージカル好きとしてのはじまりは、幼い頃に母に連れて行ってもらった劇団四季のミュージカルだ。
幼いながら、圧倒的エンターテインメント性に一気に引き込まれた。
そこからゆるゆるとミュージカルを観続けている。
中学生で東宝の「レ・ミゼラブル」を観て以降、好きな俳優も出来、そこからは東宝・ホリプロ系のミュージカルファンである。
さて、一口に「観劇好き」と言ってもいろんな種類がある。
ストレートプレイ(ミュージカルみたいに台詞が歌になってない舞台)しか観ない層、宝塚ファン、劇団四季ファン、わたしのような東宝・ホリプロ系のミュージカルファン……(もちろん掛け持ちもある)。
ストレートプレイが好きな人の中にも小劇場系の作品を観るのが好きな人もいるだろうし蜷川作品のような大規模なものが好きな人もいるだろう。
そのラインナップの中にここ数年現れて、動員数的にかなり伸びてるのが所謂「2.5次元ミュージカル」のファン層だ。
わたしの友人にも何人かいるし、多分言わないだけで実はって人も結構いると思う。
そんな、2.5次元ミュージカル好きな友人に誘われて、東宝・ホリプロ系ミュージカルファンのわたしが2.5次元ミュージカルを観に行った話である。
2.5次元ミュージカルって何?
メディアなんかで取り上げられることも多いので、ご存知の方も多いだろうが、2.5次元ミュージカルは「漫画等の2次元作品をミュージカル化した作品」という定義である。
どこからその名称で呼ばれているかはよくわからないが、その中でパイオニア的作品がミュージカル「テニスの王子様」である。
最近は「刀剣乱舞」の方が人気だということだが、「テニスの王子様」は2003年に最初の公演を行って以来たくさんのファンがいて、若手俳優の登竜門としても有名だ。
ここからは個人の見解になるが、2.5次元にも広義の2.5次元作品と狭義の2.5次元作品があるとわたしは思っている。
狭義の2.5次元作品が所謂2.5次元の舞台であり、「テニスの王子様」や「刀剣乱舞」はもちろんここに分類される。
が、実際宝塚歌劇団や東宝・ホリプロでも漫画を原作としたミュージカルを作っている。
こちらは役者としての経験もかなり豊富な役者たちがキャラクターを演じており、音楽も海外の有名作曲家に依頼するなど、普通の2.5次元作品と同一視するのも微妙だし(※善し悪しの話ではなく、ジャンルの違い)、でも定義的には……ということで、わたしの中ではこういう分類である。
この広義的には2.5次元ミュージカルだよね、という作品が宝塚歌劇団の「ポーの一族」「天は赤い河のほとり」「るろうに剣心」「ルパン三世」「JIN」やホリプロの「デスノート THE MUSICAL」、東宝の「王家の紋章」である。
デスノートの話になるとちょっと長くなるのでやめとく。
傾向としては狭義の作品は出てくるキャラクター陣は男性メインが多くて(少年漫画とか)、広義の作品は少女漫画原作が多い。気がする。ターゲット層の問題とかいろいろあると思ってるけど、まあこの辺りは余談である。
2.5次元ミュージカル「テニスの王子様」を観に行ったミュージカルオタクの話
わたしがはじめて2.5次元ミュージカルを観たのは、約2年半前である。就活上手くいかないしもう面接だるいな、とか考えてる頃である。仕事探せ。
といっても、チケットを取ったのはもう少し前だ。就活にかこつけて上京していた友人の家に泊まりに行ったところ、中高の友人が知らぬ間にミュージカル「テニスの王子様」ーーーテニミュにハマっていた。
他人の沼にも積極的にお邪魔するタイプだったわたしは、友人に誘われるままに2.5次元ミュージカル「テニスの王子様」に足を踏み入れるのである。
テニミュ、初回の感想ー初めての2.5次元ミュージカル
わたしが初めて観たテニミュは3rd聖ルドルフ戦だった。
本当は最初、不動峰戦にも誘われていたのだが、原作を読んでいたわたしは小学生時代大好きだった不二周助のかっこいい試合が観たい、と聖ルドルフ戦に行くことになった。
「全部得意なコースなんだ」が全力で観たかったんだ。読んでる人元ネタわかるのかな。
結論、大変楽しめた。
先述したホリプロミュージカルの「デスノート THE MUSICAL」は夜神月とLのテニスシーンがある(余談だが世界一好きレベルに好きだし興奮するシーン)のだけど、なんていうか、そっちはミュージカルのシーンとしてのテニスで、全ての動きは振り、って感じがある。
一方、テニミュのテニスシーンは、ボールがないのにボールが見えるのだ。動きも全然違う。彼らは透明なボールを使って本当に舞台上でテニスをしているのだ!と初見のわたしは思った。
ちなみに、この「ボールが見える!」という感想は友人に伝えたところ「新鮮な感想」と言われた。そうなのか。いやでもボール見えるのすごくない?
2次元作品の本物はどこまでいっても2次元である。それはこの先未来永劫変わらない。
ただ、テニミュを観たとき、確かに「本物のキャラクターがいる」と感じた。
彼らは本物じゃないけどあの瞬間は確かに本物だった。彼らはテニスのプロ。
元々もっとベテランの俳優を集めたようなミュージカルを観てる身としては、歌とか演技とかの技術面でどうしても見劣りする部分は感じたが、それを上回って楽しい熱量のようなものもまた、感じたのである。
2.5次元ミュージカルと普段のミュージカル観劇との楽しみ方の違い
わたしが普段観るミュージカルで好きになるのは、歌が上手い人が多い。
ミュージカルの評価ポイントは歌だけではないし芝居やストーリーがとても重要ではあるが、好きな俳優に歌が上手い人が多い理由としては、ミュージカルは「音楽を表現に使っているから」に他ならない。
あの人は歌は微妙だけど芝居がいいから、というのはたまに聞くけど、だったらストレートプレイをやればいいのでは?というのは少なからず感じるし、歌や音楽を表現方法に選んだ以上は観客に聴かせられる歌を出すべきだと思ってる。
2.5次元ミュージカルは、舞台初挑戦やらデビュー作やら、新人も多く、若手俳優ばかりで経験も未熟だ。
歌が上手い俳優もいるけど、そうじゃない人の割合もなかなか高い。
実際テニミュを観たときは「おっ…おう…?」となるシーンもあった。
でも楽しめたのは、2.5次元ミュージカルで楽しむべき箇所が、普通のミュージカルとは違うと思ったからだ。
若手の俳優たちが集まって、ほぼ初挑戦の歌やダンス(やテニス)を必死に練習し、若手たち特有のフレッシュな空気と熱量を観客に届ける。
既に一度評価されたような俳優と比べれば当然まだ成長過程で伸び代も多い俳優たち。
初日と千秋楽ではきっと短期間でも大きな成長が感じられるだろう。
2.5次元の楽しむポイントはそういう作品の熱量とかなんだろうな…と思ったし、わたしは何作品か観て、そこがとても楽しいと感じたのである。
映画・ドラマの実写化と2.5次元ミュージカルでの舞台化の違い
よく、映画やドラマで2次元作品が実写化されると原作ファンから結構なバッシングを受ける。
2.5次元舞台においては、原作ファンでも受け入れてる人の割合が高い……と思う。
もちろん2.5次元が地雷です!って人もいるけど。
わたしはその原因は「原作へのリスペクトを感じるかどうか」なのではと考えている。
2.5次元は、もちろん舞台で2-3時間に収めるための改変はあるものの、基本はストーリーからキャラクターのビジュアル等、とても原作に忠実だ。
どうしても不自然な髪型だと、あんな頭よく再現したな、と思いつつ終わる頃には気にならなくなる程度には全体的に再現度が高い。
一方映画やドラマは、キャスティングありきでストーリーやキャラ設定は話の本質をわかってたら変えないよね、という箇所をご都合改変……というパターンがある。
そもそも映画やドラマに数多のオタク達……もとい原作ファンはターゲティングされていないから、そんなオタク達に受け入れられないことはどうでもいいのかもしれないけど。オタクはつらいよ。
映画やドラマだって、実写化を企画する際にリスペクトを持てば、もう少しいい方向に変わるのではないだろうか。
まとめられないまとめ
そうして2.5次元ミュージカルの初体験を終えたわたしは、その後ゆるゆると原作で好きだったストーリーが含まれていると友人に誘われるままテニミュに行く。今まで観たのは3rd氷帝、3rd関東立海、そしてこの夏には3rd全国氷帝に赴く予定だ。
暗いミュージカルが好きなわたしは関東立海の暗さはとても好きだったしとてもよかった。
この子の歌がよかったから、そのうち東宝やホリプロ作品に来てくれないかな…というのもよく考える。
実際最近出てくる若手の俳優でテニミュ出身者は多い。
わたしの好きなミュージカル作品が、彼ら若手が目指す世界であり続けられればとても幸せである。