![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/124144183/rectangle_large_type_2_4ffaa860247c22b646a6602d1c8ef757.png?width=1200)
Photo by
39ra52manabi
くじらの瞳
波打ち際に閉じたままの貝殻が
もの言いたげに落ちていた
そっと拾ってみつめていたら
くじらの瞳に見えてくる
くじらの瞳を見てみたい
何処かで欠けて
打ち上げられたシーグラス
そっと拾ってみつめていたら
くじらの瞳に見えてくる
くじらの瞳を見てみたい
無下な風にさらされて
ひび割れそうな鉄橋下の壁
海深く沈もうとする輝く欠片達
深海より
体全体でくじらが泳いでくる
海上まで姿をあらわすと
大きく潮を吹き上げた
私の欠けた心の乾きが
大きく満ちていく
彼方から 魚の大群が
キラギラと泳いでくる
彼方から 人波が
潮騒を奏でて打ち寄せてくる
生きる為に 流れていく
心の乾きが薄れていきます
私のわがままな願いは
この大海を
くじらの瞳を宿して
ゆっくりと泳ぎたい
時には潮を吹き
子くじらを連れてゆっくりと
青い空
それよりもはるか深い
紺青の海
あなたのように
ある日暮れ
自分のバランス感覚が失われ
足元に穴が開く
上手く歩けない
くじらの瞳を見てみたい
くじらの瞳を宿らせて
ゆっくりと 身をまかせ
海深く 泳いでいく
ある朝焼け
地上の北風にさ迷い
罪ばかりが鎖の様
くじらの瞳を見てみたい
くじらの瞳を宿したら
ぎゅっと上着を深く被って
ため息交じりの息を
フゥーと吐く
閉じた瞼を開いたら
ゆっくりと
自分の為の一歩を
踏み出してみる