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あの頃の風

チリチリと自転車を押して

参観日 小学校までの急な坂道を歩く

秋を彩るツリーみたいに色づいた柿達

向かいから中学生の自転車が颯(サッ)っと風をおこして落ち葉がザッと舞い上がる

坂道を上がりきると
道沿いの家のガレージから
冊を伝う朝顔が咲いていた

秋の朝顔

あのこの歌が浮かんで笑みがこぼれる

校舎玄関口の傘立てには

黄色の傘が目に鮮やか

ひときわ元気な声の一年生

すっかり慣れて伸びやかに響く

金管の音色の様に宝かに

教室の窓から水色のカーテンがゆれて

黒板のチョークはオレンジ
ピンク 水色と花咲くような粉をまく

校庭の木々の緑は黄色がまじり

日差し柔らかな秋風に金色チョークの粉が舞う

廊下には水彩絵の具のパレットが整列

筆洗(ひっせん)に入った水の色あいは

それぞれが描いた心の色が滲む

こんな風にして

異邦人の様に小学校を見渡すと新鮮だった

あの頃の自分が離れたところから
ぽつんと見えた

こんなに輝いていたっけ

下校途中 落葉の道

地に落ちた いがぐり

小さな秋を見つけて

笑顔で遊ぶ子供達 ランドセルの音

木枯らしに急かされ短くなる

秋のゆう 

どこかの家の夕飯時

かぐわしい匂いが流れて

ポツポツと灯る窓灯り

どこまでも伸びるかげぼうしと

あの頃の風を感じながら

チリチリと自転車をついて帰る

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