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詩│優しい憧憬

あのバス停に立つといつも

雨上がりで小鳥の囀ずりが

少し聞こえた

バスに乗ると

曇りガラスに自分がうつる

近づいても、目の前のあのひとには

この思いのひとつも伝えられない

この先にある海辺のバス停まで行って

ただ並んでオレンジ色に染まってみたかったのかな

無邪気に抱きついたりね

あの瞳に映る私は微笑んでさ

同じバス停に降り立つと

野暮な自分がわかってたから

答えを求めては駄目なだけ

歌を歌を届けなくちゃ

それがいったいどんなものなのか

どこから来るものなのか

わからないから

上手く話せないから

歌を歌を届けなくちゃ

歌でないと伝わらないものを

バスに乗ってどこまで揺られよう

きっと降り立つ場所は別々でも

この街角のショーウィンドウに
素敵なコーディネートをした
マネキンを見るとあのひとを思うんだ

こんなニットがきっと似合うなとか

ドーナツショップから
眺める人通りにもスローモーションに浮かんでくる

ドーナツを頬張り
コーヒーを飲むこの幸せの蜃気楼に
ふと浮かぶ

何を食べてどんな風に笑うのか

全て優しい憧憬に映るよ

バスに揺られながら

ドアを少し開けて風を感じた

歌を歌を届けたい

言葉にならないから

歌を届けたい

雨上がりの虹

光のプリズムに小鳥達の囀ずり

私には歌を届けたい人がいるんだな

なんてこった

なんてこった

すごいことだな

バスに揺られながら

風を感じて微笑みを

祈るような空の青さ 


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