マガジンのカバー画像

22
運営しているクリエイター

記事一覧

溶解

陽を照り返す肌の白さ 幽霊のごとく溶けていく 蝉の声が掻き消していくお前の声を 溶けないで…

名無し子
2か月前

祈り

煌々と降り注ぐ光を見て そこに神を感じるのでしょう 竹林の間から漏れる夕日に 神の眼差しを…

名無し子
2か月前

夕陽のむこう

夕陽のむこうになにかがいるよ なにがいる? なにがいるかはわからんが あの赤い陽の中できっ…

名無し子
2年前

うつくしくなりたかった

歩く道はいつもぬかるんでいる 陽が燦々と照っていようが わたくしの足元は乾かない ひたすら…

名無し子
2年前

太陽の寝台

ここには何もありません。 ただまっさらな田園風景です。 たとえばこれは寝台です。 夏になれ…

名無し子
3年前
2

田圃にて

黄金の稲が光を跳ね返す 涼しげな風が稲を攫って さわさわと優しい音を立てる 赦されるならば …

名無し子
3年前
2

優しさ

優しさの中で生きているから 優しさの怖さしか知らない。 陽射しを背に受けている時 あたたかく感じながらも 背中が焦げているのを知っている。 それを見過ごすわけにはいかなかったのだ。 寒いところに出た時に 恐ろしさと冷たさに触れたけれど もう焦げることはない。 背中の火傷は自分では癒せないので 火傷を癒してくれる人を探して 冷たい夜の浜辺をただ歩く。

疾患

それはウイルス性疾患のように たやすく感染していくものである 誰かから彼女に 彼女から私に …

名無し子
3年前
3

無題

竹林の奥に光が射しこんでいる 緑が黄金に喰われている そのところに神がいらっしゃる 名もな…

名無し子
3年前
2

花筏

花筏で私を地獄に連れて行ってほしい 虚しいことを数えては 沈んでいく表情を 酒の肴なんかに…

名無し子
3年前
3

春が来る前に死んだ人の影を見る。 玄関から伸びる光 縁側から溢れる光 山菜の食卓 柔らかな光…

名無し子
3年前
4

埋葬

あなたは埋葬するのでしょう 修羅と歯ぎしりと憐れむ影を うら悲しさに燃えるこころを 泥水を…

名無し子
3年前
3

山の隙間

冬の跡 木々のざわめき 藤の花 木々の隙間を縫うような光は誇らしげ。 黄金に似たそれは緑葉を…

名無し子
3年前
2

集合住宅

音が聞こえる、音が 人の生活する音、四方から。 戸棚を開ける。 包丁がまな板を叩く。 バスタブに湯をためる。 重い物を落とす。 窓を開ける。 ライターをつける。 誰かと電話する。 おれに讒言零すのは生活音だ。 無神経に騒ぎ立てて 音を立てる者の悪口を言う。 「あそこに住む者は随分な乱暴者で いつもいやらしく目を光らせています」