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今村純/アップデート株式会社

法人名/農園名:アップデート株式会社
農園所在地:北海道伊達市
就農年:2023年(就農3年目)
生産品目:サツマイモ、カボチャ、レタスなど


農業を実践するため首都圏から北海道伊達市へ家族で移住。農家から事業承継をして描く持続可能な農業のかたち

■プロフィール


岐阜県出身。大学卒業まで農業とは縁がなかった。

就職活動のタイミングで、農業というジャンルに魅力を感じ、現場を勉強するつもりで大手農機具メーカーに新卒入社。入社後の2年間、埼玉・北関東エリアの営業企画を担い、農機具販売代理店のサポートやスマート農業商材の普及推進活動などに携わる。

高齢化や従事者の減少など、農業を取り巻くいくつかの課題に直面し、農業界に関わる人を増やす仕事がしたいと思うようになり、人材サービスやメディア事業を手掛ける株式会社マイナビの農業活性化事業部(当時)に転職。入社当初は営業部で主に民間企業への媒体の企画提案をおこない、後に官公庁向けのソリューション営業で農業を通じた関係人口の創出や就農支援事業などの企画運営に、従事する。

転機は在職4年目。民間企業への営業でつながった農業コンサルティング会社の代表から、媒体への求人広告の相談を受けた。その話の内容は、北海道伊達市の農家から同社が事業承継をして農業法人を立ち上げる。その右腕になる人材を募集したいというものだった。

その半年後の2023年4月、マイナビを退社。埼玉県に購入した家を残し、第2子を妊娠中の妻と2歳の子どもと一緒に北海道伊達市へ移住。後に伊達市の農業経営者から事業を承継する、農業法人アップデート株式会社の立ち上げメンバーとして農業に従事。

譲渡主の生産者から栽培技術を教わりながら、生産面では10ヘクタールの農地で、サツマイモ、カボチャ、レタスなどの栽培管理をする責任者。経営面では営業や労務、六次産業化などに取り組む。
就農3年目の現在、妻、第一子、北海道生まれの第二子と伊達市に暮らし、農場長として農業生産を担う傍ら、経営面では営業・労務の改善、新規ビジネスの創出・推進に活躍している。

■農業を職業にした理由
就職活動中、農業に興味を持ったのは、食を取り巻く情勢に危機感を覚え、その根幹を支える農業に携わりたいと思ったからだ。

農業を支援する仕事がしたいと考えて農機具メーカーへ。高齢農家が農業のために年金をはたいて100万円近くの機械を買う現状を目の当たりにして、農業経営を継ぎやすくする環境が必要であると感じていた。

それなら農業の人材に関する課題を解決する力になろうと考え、「マイナビ農業」に転職。営業として生産現場を見ると、地方にいくほど財力が厳しく農業を支援できる体制に差があることに課題を感じた。

そこへ、取引先である民間企業の代表から、北海道伊達市で事業承継する会社を立ち上げるにあたって、その人材募集の求人広告の相談があった。もしこの話がなければ、北海道で農業をすることはなかっただろう。

自らが農業をやる最後のチャンスかもしれない。そう思って、その場で手を挙げた。

妻に話すと「なんで?」という反応。埼玉県に自宅を購入したばかりだったが、兼ねてから希望していた多拠点生活にあたることや妻の仕事が在宅可能なこともあり、家族で伊達市へ移住。持続可能な農業で食を豊かにするという思いを胸に就農を果たした。

■農業の魅力とは


「食」という生きる根幹を担っている誇りが持てることです。自分たちが作った農産物を「おいしい」と評価してもらえるのも、とても嬉しいことです。農業をする人は誰もがそう言いますが、改めて身をもって感じました。

北海道の農業はスケールが大きく、与える影響が大きいことにも誇りを感じます。伊達市は道東の十勝エリアのように大規模ではありませんが、道内では比較的温暖な気候でさまざまな野菜を育てることができる産地です。その一方で、特産品と呼べるものは多くありませんが、それを自分たちで作っていくことができる状況にあるのは魅力です。

農地の譲渡主は、レタスを中心に葉物野菜を多品目栽培していました。多品目作ることでリスク分散にはなりますが、工数が多く人材確保が難しい現状を踏まえ、栽培品目の選択と集中を進めています。当初の9品目から2年目の現在は6品目、3年目には5品目程度に集約しつつも、新たな作物としてニンニクに挑戦することも考えています。

また、新たに着手したのがサツマイモとカボチャです。貯蔵性が高い作物で、加工もできるので自社努力で収益を増やせる可能性を秘めています。その第一弾として、2024年3月、親会社にあたるサクシード株式会社が「ヤバイ焼き芋屋さん」を東京にオープン。また、自社で冷凍加工の体制を整備し、冷凍焼き芋を北海道伊達市のふるさと納税返礼品として採用していただいております。

一般企業を経験した身からすると、農業は良くも悪くも経営が大胆だと感じます。農家さんの頭にあって言語化・マニュアル化できていないため引き継ぎが難しく、それが担い手不足の一因になっているとも感じました。属人的な業務を極力減らし、作業を平準化することで人材の確保・定着を図ろうと改善に取り組んでいるところです。人材確保のための労務管理の基盤を整えているところですが、人材を地域で探すのは難しいので、道外から移住して来てもらうための施策も併せて検討中です。

地域に人を呼び、農業を盛り上げる力になれることが、農業法人でのやりがいです。

■今後の展望

短期的には、生産品目の選択と集中を進めることと、2年以内の法人としての黒字化です。事業承継して間もないため、設備投資等を含めて費用がかさんでいる状況なので、利益を増やすための手を積極的に打っていきます。

中期的には、農産物加工の体制を整えることです。地域のストックを活用して加工施設をつくり、自治体も巻き込んで観光にもつながる六次産業化を進めていきたいと考えております。特にサツマイモで伊達地域を産地化できないかと考えているところです。伊達市を含め北海道がサツマイモの適地になりつつあるので、地域の生産者の方々と力を結集させ、稼ぐ農業を目指していきます。

個人でできることよりも、法人としてできることの範囲はとても広く、加工品の製造や自治体などとの連携に取り掛かるスピードも早いです。目的を果たせる環境で農業ができていることをモチベーションに、今後は消費者に農産品や加工品をダイレクトに販売できるECなどの体制を構築していきたいと思います。

ここまでが法人の目標。個人の目標を言うと、まず技術をつけることです。生産者に学びながら、周囲から信頼され、どんなことでも気軽に相談してもらえる人になっていきます。そして伊達市からの農業を盛り上げる力になれるように頑張ります。

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