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萩原 紀行/のらくら農場

法人名/農園名:のらくら農場
農園所在地:長野県南佐久郡佐久穂町
就農年数:22年
生産品目:春菊、ケール類、レタス、水菜、青梗菜、小松菜、三つ葉、しそ、ターツァイなどの葉物から、かぶ、トマト、とうもろこし、きゅうり、なす、ピーマン、いんげん、えんどう、ブロッコリー、大根、かぼちゃ、じゃがいも、ニンジン、ごぼう、玉ねぎなど60品目
HP:https://www.norakuranoujyou.com/

no.56

農業を医療並みに高度化させたい。土壌分析データを活用

■プロフィール

 住宅設備メーカーに就職するも、仕事のストレスからじんましんを発症。大学のゼミで有機農業家・金子美登さんを知ったことがきっかけとなり、農業体験の末、脱サラして弟子入りに至る。

 住み込みで規則正しい修行生活をおくった結果、じんましんが完治。1998年に長野県に移住して就農した3年後に「土壌分析」と出会い、無我夢中で続けていた農業が客観視できたことに感動し、「土壌分析の会」を設立。

 化学肥料・農薬を使わず、堆肥を使った施肥設計で作られた野菜は栄養価が高いとファンが多く、生協をはじめ、首都圏、関西圏のショップでも人気だ。

 オーガニックエコフェスタ栄養価コンテストで2019年に総合グランプリ、2020年にもグリーンケールで2連覇達成するなど、2022年までに部門別最優秀賞10冠達成。

■農業を職業にした理由

 千葉県のサラリーマン家庭に育ち「農業は継ぐもの」と思っていたが、食生活の乱れで体調を崩したことから園芸療法への関心が高まるように…。

 埼玉県の霜里農場で有機農業に触れたことがきっかけで、脱サラを決心。住み込み修行の末、26歳で就農してから3年間は、成功しても失敗しても、理由がわからず手探り状態を続けていたが、土壌分析に出会って、数値化して解析することができるようになった。
 
 「農業を医療並みに高度化させたい」を理想に、緻密な施肥計画、生育診断、栄養価分析を柱にした野菜作りで、食の重要性を理解している医者など専門家から高い支持を集めるとともに、全国の新規就農者からの悩み相談にも気軽に応じるなど、若手育成にも熱心だ。

■農業の魅力とは

 20年前、土壌分析はメジャーではありませんでしたが、今も多くの誤解があると思います。土に含まれる養分の過不足を知るだけにとどまらず、どうしてこういう状態になったのか、前作の影響を分析したうえで、植物の生育に合わせたアプローチを考え、それが正しいことが裏付けられるのが楽しいのです。

 農業に「奇跡」はなく、化学変化によって、なるべくして作物は作られます。台風や日照不足などの脅威からは逃げられませんが、100%回避しようとするのではなく、失敗の原因を徹底的に分析して、仮説に基づいて改善していくことで、1つずつリスクを減らしていくことが可能です。

 私はこれまで、リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍と社会不安を3度経験しましたが、売上は少しずつ伸びています。

 社会不安の時にどう歩いて行くかを示す地図が無くても、「食糧を作っていこう!」という気持ちを忘れなければ、荒波を乗り越えるための方向指示器になってくれると思うのです。

■今後の展望

 市場経済の世界では「マーケットイン」が常識ですが、私たちは美味しいから生産する「プロダクトアウト」を重視しています。

 売れるから、安いからと大人は「ニーズ」で判断しますが、子供の価値は「美味いか、不味(まず)いか」それだけです。

 味や栄養価にこだわった結果、子供が野菜をモリモリ食べるようになったとか、健康診断の結果が良くなったと聞けば、生産者としても「自分たちは医者と同じくらい尊い仕事をしている」と誇りを持てます。

 売上を伸ばすのは大事ですが、規模を拡大しても楽しいのは経営者だけ、働く人は無限地獄のサイクルに陥ります。農場では10人の社員が正社員で、それに期間雇用のスタッフが8人と、冬に作物が作れない長野県では多い方だと思います。

 これまでに何人かが独立就農し、農場内で3組が結婚しました。これからは若い彼らが子育てしながらでも働ける環境を作っていかなければなりません。

 資材高騰が深刻な今だからこそ、プライスだけを追い求めるのではなく、高い栄養価のある野菜作りを研究することで、みんなが良くなるサイクルを生み出していきたいと思っています。

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