清水 寅/ねぎびとカンパニー
会社社長を歴任し、「1本1万円のネギ」で天下をとる
■プロフィール
長崎県の高校を卒業後、消費者金融会社に就職し、営業部門で全国トップに。20代は同グループの7つの子会社でホテルやゴルフ場、不動産、温泉などの社長を歴任して、事業を立て直す。
妻の実家がある山形県天童市で受けた相談をきっかけに就農を決意し、2011年脱サラ。「3年で天下をとる!」を目標に、達人のもとで栽培を学びながら、農地1ヘクタールからネギ栽培をスタート。
2014年には「初代葱師」を名乗り、会社を設立。2017年、糖度21.6度のネギを作って「真の葱」「寅ちゃんねぎ」としてブランド化。
2019年からは300万本に数本しか取れない1本1万円の奇跡のネギ「モナリザ」が話題になり、『なぜネギ1本が1万円で売れるのか?』の著書を上梓。2019年、山形県ベストアグリ賞・農林水産大臣賞を受賞。メディア出演多数。
■農業を職業にした理由
29歳の時に妻の親戚から「地元の農業に元気がない」と相談されたのがきっかけとなって、農業のことを何も知らないのにもかかわらず、「俺がやってやる!」と名乗りを上げた。
素人でも挑戦しやすい作物をリサーチした結果、畑での栽培期間が長いネギならば、ライバルが少ないうえ、味の違いが分かりにくいので「3年で天下が取れる」と勝機を確信。
30歳で脱サラして山形県に移住した後は、「ネギの神様」と呼ばれる名人の下で基礎を学びながら、農地確保に走り回る。
新規就農者としては破格の1ヘクタールから栽培を始め、以後は毎年のように農地を倍増。さらに同じコストをかけるなら、MやLより太い2Lサイズの方が、利益率が高くなるとしてネギを太くする技術を追求しながら、販路を拡大。
同時に土づくりにもこだわり、有機肥料に切り替えた結果、収穫量が上がって、フルーツ並みに甘味のあるブランドネギの開発に結びついた。
■農業の魅力とは
7社の経営を立て直した自信と若さから、最初は農業だって楽勝だと思っていましたが、10年経っても答えを見つけるのは難しいもの。でも、それがやりがいにつながっています。
経営が軌道に乗ったら現場作業はスタッフに任せる予定でしたが、作り始めると楽しいんです。前年に成功して、次の年に同じようにやっても失敗することがある。こうやったらこうなるという絶対の正解がないから、農業は続けるしかないのです。
2Lサイズのブランドネギの場合、根元にたくさん土をかければ白い部分は増えるけれど縦に伸びる、土をかけなければ太くはなるけれど、白い部分が少なくなるという相反する特徴があるので、これをバランスよく作るのが醍醐味なのです。
言うなれば、農業は患者と医者の一人二役。病気になったネギを、自分たちで原因や治療法を見つけなければならない。苦しいし、歯がゆい思いもするけれど、それが魅力だと思っています。
■今後の展望
今、従業員は50人体制、栽培チームと出荷チームに分かれて作業をしていて、僕の代わりになるスタッフも育っています。
おかげさまで山形県外の農家からも「良いネギを作る方法」や「苗」に関する相談が多数寄せられるようになりましたし、僕が直接その農場に出向いて指導することも少なくありません。
良いネギを育てるうえで、自社で肥料を開発して販売するようになりましたし、雑草が発芽しにくくなる技術も確立しました。
10ヘクタール近くまで農地を広げましたが、今後は単年度の栽培面積を減らして、土壌を休ませながら、収穫量は維持するように経営を見直します。その分、農業相談に応じたり、苗の販売にも力を入れていこうと思っています。
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