見出し画像

小澤 光範/みかんのみっちゃん農園

法人名/農園名:みかんのみっちゃん農園
農園所在地:和歌山県有田郡有田川町
就農年数:7年
生産品目:ミカン、はっさく、レモンなど柑橘類60種類
Instagram:https://www.instagram.com/mikan_no_mitchan/

no.68

ミカンを通じて人とつながり、農業の可能性を広げたい

■プロフィール

 江戸時代から続くミカン農家の6代目。近隣に近畿大学農学部の農場があったため、高校卒業後は同大学の農業生産科学科へ進学する。

 卒業後は関西の小麦粉の製造会社に就職し、後に青果物を扱う会社に転職。農産MD職として撮影取材に同行していた2013年、取材先の農家から「実家を継いだ方がいい」と勧められ、2015年、脱サラして実家に就農。

 傷モノや規格外のミカンをマルシェやイベントで配布するなど、当初は販売を中心に力を入れていて、なかなか「自分が作ったミカンだ」と胸を張れなかったが、今の自分があるのは祖父や両親が何十年も農業をつないでくれたおかげだと気づいたことがきっかけで、生産者の自覚が芽生える。

 そうしたなか、基本的な従来の生産方法に疑問を感じ、自分自身の目指す農業スタイルを見直したうえ、改めて、土づくりや防除、剪定などの栽培の基本を学ぶために、名人農家のもとに弟子入り。

 施肥や資材などを見直した結果、目に見えて作物の出来が良くなるとともに、同じ農法を取り入れている若い仲間が増えて、情報交換などを通じて交流の輪が広がった。

 生産者としての顔と、イベントなどでPRをするときは、巨大なミカンの帽子をかぶったゆるキャラ「みかんのみっちゃん」という2つの顔を使い分けて活躍。

■農業を職業にした理由

 会社員時代、全国の生産者を取材していた最中に出会った農家から「生産者と消費者の関係性が密になる時代がすぐそこまで来ている。実家が農家なら絶対に継いだ方がいい。農家は生まれながらのエリートだぞ!」と就農を勧められた。

 さらに、彼の息子があとを継いだ理由を「お父さんがカッコいいから」と話すのを見て衝撃を受けたことで、嫌っていた就農への気持ちが動く。

 26歳で就農後も、都会への憧れがなかなか捨てきれず、栽培に身が入らなかったことから、ミカンの木を枯らしてしまったこともあった。

 そんななか、マルシェの客から指摘された「君たちが売っているのは代々の先祖が何十年もかけて育てた木のミカンだ」という言葉に、何も言い返せなかった苦い経験から、栽培に真剣に向き合うようになった。

 近隣の名人のもとで栽培の基本から学び直した結果、これから目指すべき農業の方向が明確につかめたという。

 父にも「やっとミカン農家として地に足がついた。これからはお前の好きなようにやれ」と太鼓判を押されたことで、品種を増やしたり、地元生産者とも交流するようになるなど、ミカンを通じてさまざまな人との交流の輪が広がった。

■農業の魅力とは

 農業には「生産」や「販売・マーケティング」「6次化」などさまざまな楽しさがありますが、僕は就農直後から、傷モノや規格外品をイベントで配布することで、ミカンのおいしさを伝えてきました。

 そこからSNSを通じて応援してくれる人の輪が広がって、百貨店で扱われるようになったり、某生命保険会社のお歳暮に使ってもらったり、高級食パンの「乃が美」さんとコラボしてジャムを作るなど、ミカンを通してさまざまな人と繋がりができました。現在、年間1万人近い消費者にSNSを通じて販売しております。

 また、生産者の仲間も増えました。当初、農業や地元への苦手意識があったので、地元の生産者とはほとんど交流しなかったのですが、生産者としての自覚が芽生えて以来、有田川地域の20〜30代の仲間ができて、情報交換することができるようになりました。

 どれも僕1人ではできなかったこと。ミカンが結んでくれた縁だと感謝しています。

■今後の展望

 有田川地域の若手生産者のグループができたので、将来的には自分が中心(ハブ)となって生産者グループをもっと形にしていこうと考えています。

 これまでは自社農園のためにいろいろな活動を展開しておりましたが、今後は地元の生産者や行政、メディアを巻き込んで、活動の輪を広げていきたいのです。

 仲間たちには「俺たちは生産に特化するので、みっちゃんに任せるから面白い世界を見せてくれ」と信頼を寄せてもらっています。

 農業者で終わるのではなく、農業経営者として、農業の可能性を広げたい。和歌山県だけでなく、県外の消費者や販路と結びつくことで6次化や輸出、さらに後継者不足の問題にも取り組んでいきたいと考えています。

#20代で就農
#近畿
#事業承継
#経営手法
#経営哲学
#挑戦者
#SNS活用
#ユニークな経歴
#SDGs
#Uターン
#直接販売
#注目の農業者
#地域活性化