虐待サバイバー「karma」による、代表挨拶文
当時の私たちが引き受けてきた役目と骨の髄まで浸透した猛毒は、これだけ年月が経った今もなお、自分の奥深くに根差して人生の邪魔をする。
私は折檻中、さながら古紙回収の新聞みたくビニール紐で手足を縛られながら、自分の吐瀉物を食らって生き延びていた。
それを可哀想なことだと思うか、気持ちが悪いと感じるか、はたまたバイタリティーに拍手するかは、あなたの自由だ。
しかし、この拙文を読んでくれているあなたが抱いたその決してポジティブではない気持ちが子ども虐待への問題意識に直結し、ほんの少しの理解や行動で救われるかもしれない小さな命があるということだけは、どうか覚えておいて欲しい。
私は紆余曲折を経て、2児のシングルマザー兼プロの写真家となった。今はkarma(カルマ)というアノニマスネームで活動している。
厚生労働省監修「だらしない夫じゃなくて依存症でした」(三森みさ作)では、主人公の幼馴染である薬物依存症の回復者として取材を受け、キャラクターのモデルにもなった。
そしてこの夏から、社会的マイノリティたちのサードプレイスであるカフェ「ごちゃまぜCafeメム」と、総合クリエイティブスタジオ「オトナルスタジオ」を経営している。
パートナーである文筆家の遠藤光太と共に「ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)の実現」をテーマに掲げ、ここから少しでも人々が生きやすくなるよう様々なことに取り組んでいく。
私は、「日本は平和だ」などという会話を聞くたびに、被虐待児の生きる小さな小さな世界が可視化されていないような感覚になって、憤懣やるかたない。
浴槽にドライヤーを突っ込まれて感電する子どもがいる社会の、何が平和か。
頭蓋骨が陥没するまで殴られる子ども、真夏の車内に放置される子ども、そしてついには命を落としてしまう子どもがこれだけ多く存在しているのにも関わらず、平和な社会とは一体、どういう了見なのか!
しかし、こうして自宅の椅子に座りながら液晶画面に向かって怒っていても、子どもたちの未来は守れない。実際に腰を上げて動き始めないと、物事だって動き始めることはないのだ。なにより、「ソーシャル・インクルージョンの実現」を提唱して活動しているからには、自分の辿ってきた軌跡のひとつである虐待問題を避けては通れない。
それは私にとって、自分の子どもたちのためにも、特に熱心に取り組みたいと考えていた問題だった。
そこで、「日本一醜い親への手紙 そんな親なら捨てちゃえば?」の編者である今一生さんと連絡を取った。
今一生さんのブログには、共感できることばかり書いてあった。
ご著書も拝読させていただいた。
この方と一緒なら、日本を取り巻く最低で最悪な子ども虐待問題も、少しずつ良くしていけるのではないかと思った。
でも、まだ足りない。
何が足りないって、当事者と第三者の相互理解が足りない。子ども虐待への問題意識が足りない。取り巻く現状に対する認識が足りない。地域の目が足りない。叫びを聞き入れる耳が足りない。差し伸べる手が足りない。抱きとめてくれる胸が、心が、圧倒的に足りない、足りない、足りないのである。
母親になった私は、それまで忌み嫌っていたような親の暴力的な衝動の内訳を、身を以て実感した。そして、親たちを責め立てて罰を与えていても、全く意味がないことに気がついた。
当事者にしかわからない視点が、そこには必ず在るのだ。
いち当事者として、いち母親として、子ども虐待防止のために何ができるか。昨日も今日も、考えている。きっと正解など無いのだろう。それでも、その時その時の最善策を思案し、実行することに意味があると信じて行動していきたい。
そこで私は、今一生さんと子ども虐待防止策を考えるイベントの開催を決めた。
多くの当事者の声を集めてきた今一生さんだからできる当事者と第三者の橋渡しを、2019年秋、この東京で行う。今一生さんの講演イベントは3年目になるそうだが、史上最も意味のあるディスカッションを繰り広げることで、実際に改革を進めるための一石を投じたい。
当事者の叫びが、一人でも多くの人に届くといいと思う。
そして、イベント開催に向け、「No More Abuse Tokyo」というチームを発足した。
現在決定している主要スタッフは、以下の3人だ。(名前のリンク先は各ツイッターアカウント)
代表:karma(写真家)
副代表:ふじもとあつし(映画監督)
事務局長:遠藤光太(文筆家)
さぁ、虐待サバイバーたちよ立ち上がれ!
今こそ結束し、本当に効果のある虐待防止策を考え、実現に向けて動き出そうじゃないか!
…というわけで、「No More Abuse Tokyo」では、メンバーならびにボランティアスタッフ、そしてスポンサー様を大募集しております。
ご興味のある方は、代表karmaのツイッターアカウント、もしくはNo More Abuse Tokyo 公式メールアドレス【no.more.abuse.tokyo@gmail.com】まで、ご連絡ください。
また、今後このnoteで情報配信などを行なっていきますので、フォローも併せてお願いいたします。
「No more the pain, Go over the chain.」
…もうこれ以上、その痛みを繰り返さないために。
身体障がい者は、バリアフリー新法を作って駅や商業施設などにエレベータやエスカレータを取り付けることに成功した。
LGBT+は、パートナーシップ条例を全国各地で続々と実現させてきた。
こうした当事者運動の第3の波は、親から虐待されても必死に生き延びてきた「虐待サバイバー」によるアクションだ。
もう、専門家に任せていては、この国の子ども虐待は減らせない。
親から虐待される痛みを知る者が立ち上がらなければ、いつまでも子どもは親に虐待され続けるし、虐待されて大人になった人へのケアも自己負担を強いられるばかりだ。
子ども虐待防止策を作るチャンスを、きみの地元で|今一生のブログ