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適応障害とわたし@2020/5/19

なんだか記憶として残るほどでもない、意味不明な夢を見た。わたしの好きな女優や声優、バンド、食べ物に本、場所、キャラクターが、まるで走馬灯のように目の前でグルグルと駆けめぐる夢。
パチっと目を覚ますと、途端に形容しがたい感情に体を支配される。「あぁ…今日も仕事の日か…」とおぼろげに思い出した後、どうしたら布団から出られるかポヤポヤと考えはじめた。

昨日に続き、今日も雨。それに加えて気温も低い。
さて、このぬくい布団から起き上がるにはどうすればいいか?簡単なことだ。布団の中で服に着替えてしまえばいい。…と言いたいところだが、あいにくベッド横の椅子に服を用意していない。
最近、晴れの日が多くなったおかげでベッドからすんなり起きられるようになってきた。なので、そろそろ布団の中で着替えるのも卒業しようと決意したのだ。
しかし、完全に梅雨という忌々しき時期の存在を忘れていた。癖っ毛で剛毛なわたしにとって、梅雨とは永遠に分かり合えない存在なのだ。おまけに骨折した左手の小指が痛くてしょうがない。

だが、そうこう考えているうちにも時間は過ぎていく。こうしている間にどんどん仕事の時間が迫ってくる。身の危険を感じてサッ!と布団から逃げ出した。
あーもう、ホント会社員めんどくさい!なんでこうも個人の大事な1日の半分以上も会社に捧げなければならないのか?えぇ?何とか言ってみろよ、国会の会議中に居眠りしてる官僚のじぃさんどもよぉ?
脳内で官僚のじぃさん達にメンチを切りながら朝のストレッチに励む。もう新ゴジラみたいな展開がコロナでも起きればいいのに、と縁起でもないことを考えた。

今日の朝食も納豆ご飯with昆布の佃煮とクリームチーズ、ヨーグルト。クリームチーズと昆布の佃煮の組み合わせが罪深いほど美味しかった。
「頼む。プロテインよ、今日中に我が家にやって来てくれ!」もうプロテインのことを想像しただけで唾液が出てくる。パブロフの犬状態。ヨーグルトを口にかき込みながら、空のプロテインシェーカーに「大丈夫。もう少しの辛抱だからな?」と励ました。

どーせ今日も淡々と黙々と資料作りなので、毎朝のzoom会議で繰り広げられる上司同士の会話をボケーッとしながら聴いて過ごす。たまに「これわたし参加する必要なくね?」と思う。だって3日に1度、上司と二言三言くらいしか交わす仕事の話題がないんだもの。まぁ、その時間は作業しなくて済むから助かるけど。

でも参加してるのに終始無言で会議が終わると、何故だか疎外されてる感が伝わってくる。「お前は病気で大した仕事もしてないし、べつに話題振らなくていいよな?」と判断されてるように感じてしまう。
そのくせ参加が少しでも遅れると「朝のMTG始まってますよ?」と後輩がわたしに個人宛でチャットを投げてくる。後輩に先輩へチャットを投げさせるのは申し訳ないと思ってる。反省もしてる。
…でもさぁ、その言い方はいくらなんでも無いんじゃないの?正直イラッとしたし、ひどく悲しかった。
ここには、わたしに寄り添ってくれる人は1人もいないんだと思った。

後輩はわたしが適応障害であることは知らない。単に”病気で復帰訓練中”としか伝えられていない。だからこそ接し方が難しい。後輩に限った話ではないけれど、相手は自分なりに気を使って言葉や行動を選んでるかもしれない。でも、それが時として思った以上に傷つき、どう切り返せばいいのか分からなくて怖くなってフリーズしてしまう。しかも顔が見えないから反応が遅れると「聞こえてるー?」と返答を急かされる。「あなた、わたしが適応障害だって知ってるでしょ?なのに何なのその態度。何様のつもり?」と罵倒したくなる。

そもそも会社の人間が適応障害がどんな病気であるか知ってるかどうかすら疑わしくなってきた。
というのも、明らかに案件の異なる仕事をバラバラに依頼してくるし、どれを優先したらいいか質問しても曖昧な答えしか返ってこない。
ペーペー社員のわたしが言える権利はないと思うけど、行き当たりばったりでわたしを引っ張りだしてこないでほしい。

「下半期までに通常通り働けるようになってほしい」なんて軽々しく言わないでほしい。というか、そんな権利あなたにないでしょ?病気なのはわたしだし、治していくペースはわたしと病院の先生に委ねられてるのだから。
というより、その前にもっと社員の病気のことを知ろうと思うべきなんじゃないの?それが会社の上に立つ人間として当然のことじゃないんですか?
そう考えたら、今日の仕事はいつものペースで進められなかった。この人は大丈夫だろうなと思ってた上司が、まさかこんなに薄情な人だとは思わなかった。

やっと取り戻しかけた日常が、無知な人間によってかき乱される。これが心の病を抱えて生きる人間に与えられた試練なのか。だとしたら、あまりにも辛くて苦しくて、非情で、悔しくて、残酷すぎる。
そりゃあ、生きる歩みを止めて、心体ともに楽になる方法を選ぶ人が増えるに決まってる。そのことに、一体どれだけの人間が気付いているのだろうか?
少なくとも、心の病に無知な人間には到底、想像できないことだろう。

たぶんこの先、永久に今の会社の人たちとは分かり合えないな、と諦めと呆れの感情を抱きつつ、今日の仕事を終えた。
なんで今日はこんなに思い詰めてしまうんだろうと思い、ふと窓の外を眺める。あぁ、今日は雨か。あいかわらず左手の小指が痛い。

本当は今日、仕事を終えた後にペンタブでお絵かきしようと思ってた。でも、やる気がどうしても起きなかった。自分を奮い立たせられなかった。毎日少しずつ触って慣れていこうって決めたのに。あぁ本当に情けない。

心も体も冷え切っていたので、せめて温かい飲み物でも飲もうと思い、階段を下りた。すると、段ボールが一箱転がっていた。宛名を確認するとわたしの名前。
段ボールを抱えて急いで自室にUターンする。丁寧にテープ部分にカッターの刃を入れていく。箱を開けると、そこには待ちわびていたanomaのプロテイン(抹茶味)がきれいに収まっていた。
ここ数日プロテインプロテインと半狂乱になっていたから、もっと計り知れないほどの嬉しさが込み上げてくるかと思った。
でも、さすがに今日はちょっと憂鬱ぎみでほんのり「嬉しいな」としか思えなかった。
とりあえず、台所で寂しそうに置いてあったシェーカーとプロテインのツーショットを撮った。

なんとなくシェーカーが嬉しそうに見える。
せっかくなのでちょっとだけ飲んでみようかと思ったけど、あくまでプロテインは朝食用。明日の朝まで我慢することにした。
抹茶味は妹の好物なので、母に「これわたしの朝ごはんだから」と釘を刺し、台所横の棚の奥に隠した。

あらためて台所に出向き、甘くて温かいミルクティーを入れる。一息つきつつ、適応障害まっただ中に作った「人生でやりたいこと100」をEvernoteから開いてリストに目を通す。
ラジオをやる。スキューバダイビングをやる。Myクロスバイクを買ってサイクリングする。フィジーに行く。人の手助けができる仕事をする。ありがとうと言ってもらえる仕事をする。おいしい軟骨カレーを作る…
100を超えるリストを見ていたら、病気に関心のない会社の人間たちが哀れで可哀想に思えてきた。
だって、あの人たちは自分の本当にやりたいことや好きなことに気づくための時間さえ無いのだから。

「アフターコロナを乗り切るために、会社に貢献するための目標を各社員に立ててほしいんだ」
先日の会社の面談で上司に言われた言葉。この言葉でわたしは確信した。会社は適応障害のわたしよりコロナを取るんだなぁと。
まぁ、当たり前っちゃ当たり前だよね。だって会社は存続させなきゃいけないし、赤字を回避しなきゃ社員に給料を渡せないんだから。

だったら立ててやるよ、その目標ってやつ。
それも、とっておきのやつを。

“わたしは人の心に寄り添ってありがとうと言ってもらえる仕事を自分で立ち上げ、この会社を辞めます”

ね?これなら会社の重荷にもならないし、赤字を回避できるでしょう?
あ、今「どうせ無理」と思ったでしょうね。
そういう上司や社員の方々は植松努さんの「好奇心を”天職”に変える空想教室」を読みやがれください。

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