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認知症だけど身体は元気な父が…要介護度と介護の大変さの関係

父が認知症と診断されて4年経った。
その間少しずつ進行していき、より手がかかるようになったが、要介護度は上がらなかった。

なぜか。
身体は元気だからだ。

健診でもなにも引っかからないし、入浴は助けなければならないが、排泄や着替え、歩行なんかもなにも問題ない。

だけど手はかかる。それは認知症が進んで奇妙な言動が増えているからだ。
最近母が白内障の手術をし、「一週間は安静にしてください」と言われたが、安静にできずに苦しんだ。

あれこれと苦しみ、母は、「もう父ちゃんを施設に入れよう」とつらそうにつぶやいた。
それでグループホームの入所を検討しようとケアマネさんと面談した。

ケアマネさんからいろいろ説明を聞いてる途中で、ぽつりと母が聞いた。
「ウチはまだマシな方ですよね?もっと苦しんでいる方がいっぱいいらっしゃるんですよね?」
うーんと唸るケアマネさん。

「要介護度が重いからといってご家族の負担も重いとは必ずしも言えないんですよ。寝たきりの方だったら、排泄の介護などはいるでしょうが、ずっと寝ているので動き回る方より手がかからないこともあるのでは?私が見た限り、ご主人は要介護度は低いですが、ご家族の負担は重いと思いますよ」

そうなのか……。
その言葉は母に響いたみたいだった。

母は典型的な、努力・根性・勝利みたいな人で、「こんなもんじゃない。まだまだやれる」と自分を鼓舞する人。
だからどんなに苦しくても、「もっと苦しい人がいる。その人に比べれば」と頑張ってしまうのだ。

でもそれは危険な思想だとも思う。
そうやって頑張りすぎて精神病に罹ってしまったのが私だからわかる。

と、しんみりとしていると、「なんか足が痛い」とずっと訴え続けていた父が、「なんか」ではなくなったのか、本格的に痛がり始めた。
歩くのも困難なようなので、閉まる間際のかかりつけの内科に兄が背負って連れて行った。

幸い大きな病気やケガではなかったようだが、父はしばらく満足に歩けなくなった。
おトイレくらいは行けるが、階段は上がれなくなった。
食事も、寝かせている部屋でとるようになった。

ずっと母は父と同じ部屋で寝ており、夜中にしょっちゅう起こされる生活を送っていたのだが、寝室が別になり、「全然身体がラクだわ!目の調子もいいし!!」と朝から爽やかであった。

やはり、「認知症が進んでいるけど身体は元気」という状態はかなりやっかいなのだろう。
それなら、おとなしく寝ていてくれた方が、逆に手がかからない。
たぶんそれは真理なのだろうと思う。

要介護度では表せない介護の大変さの尺度を作ってくれるとラクなのにな。
そして、そんな高齢者を(欲を言えば年金生活者でも払える値段で)受け入れてくれるような施設が広まってくれることを望む。

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