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おじいちゃんの宝物

御年88歳、毎日元気いっぱいのおじいちゃんには…宝ものがたくさんある

家族と暮らしてきた、自分で建てたこのおうち
大好きだったおばあちゃんの写真
結婚式の時のビデオ
首から下げている結婚指輪
21冊の交換日記
本榧の足付碁盤と碁石のセット
お気に入りの力士と一緒に撮った写真
サイン入りのミステリー作家の初版本
初任給で買った懐中時計
48歳の時に摘出した胆石
23歳の時に切ったちょんまげ
フルでそろっている自分の乳歯
桐の箱に入ったへその緒
縁起のいい蛇の皮コレクション
ご利益がありそうな777円のレシートの束
昔飼っていた亀の甲羅
家の守り神だったでっかいヤモリの干物
タマムシだらけの昆虫標本
よくわからないスクラップブック

宝物を毎日チェックするのが、日課となっている

「…よし、今日も全部無事な状態であるな」
「あんまり出し入れしない方が良いんじゃないの?」

「たわけが…毎日新鮮な空気にさらさねばカビが生えるものもあるんだわ!」
「そういうものかなあ…結構毎日重労働なんじゃない…?」

「毎日朝5時からデイのお迎えまで三時間もかかって、まあ…もういい加減やめたら?」
「これはわしの大切なルーティンだでな!やめんぞ!!」

ピンポーン!!

「おはようございまーす!!昭吉さん、今日も元気ですねー!外まで大きな声が!」

「あ、おはようございます、ええとこれ今日の荷物で~す!」
「ええか!!わしのおらん時に…勝手に掃除なぞするんじゃないぞ!!」

「しないよ、大丈夫だから!!」
「わしは全部あの世に持って行くでな!!!」

「ハイハイ、わかったわかった…行ってらっしゃい!!!」
「いってらっしゃい」

おじいちゃんの業突く張りにも困ったものだ
全部あの世に持って行くことなどできるはずがないのに

だがしかし……、おじいちゃんは昔から有言実行の人だった

好きになった女を娶ると決めたら娶り、免許を取ると言えば取り、外車を買うと言えば外車を買い、会社を作ると言えば作り、家を建てると言えば家を建て、歌手デビューすると言えば歌手デビューをしたのだ

おそらくあの世に宝物を持って行く気満々なのだろう

できるはずないのに
できるはず、ないのに
できるはず、ないのに……?

ちょっとまて……

火事でも起こしたら、全部持って行けて、しまうのでは……?

「お母さん、おじいちゃん…ヤバいかもしれない」
「……何が?」

真夏だというのに寒気を感じた私は、お母さんに…自分の推理を、語り

おじいちゃんの部屋に火の気がないか…徹底的に探ることを、決めたのだった

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