【読書感想文】夜のこと/pha
本との出会いは本当に不思議だ。たぶん僕は、いまこの本を読む必要があったのだと思う。読むべくして出会った。
もともと読みたかったわけでもないし、1カ月くらい前にXか何かで見かけて、なんとなく読んでみようと思ってぽちっただけ。著者のことは知ってはいたが、それこそ10年以上前にメディアに取り上げられていた時期であって、それ以降は全くもって縁がなかった。なのに、なぜか読みたくなったのだ。
この本の前に読んでいたのが、「夜行秘密」でこちらも抜群に良かったのも影響しているかもしれない。
事前の情報は全くなかったが、なんとなく、この「夜のこと」も表紙を見るにこの「夜行秘密」に通じるところがあるのではないかと思って、手に取ったのである。同じ「夜」つながり。
〇感想
感想をどう書けばいいのかわからない。ただ、確かに僕は今この文章を求めていたのだ。ここに出てくるような誰とでもセックスをするような人生を歩んでこなかったし、結婚もして、子どももいるので、そういうところで共感をしたわけではない。
どうしても説明できないような人間の性質。誰にも理解はされないだろう自分だけの嗜好。誰にも言いたくない秘密。頭では理解しているが制御できない欲望。
僕はそういったものこそが人間らしさだと思っている。こういうところが人間臭くてとても好きだ。
誰にも理解されないけど、理解されたい。言いたくないけど、言いたい。わかっているけど、止められない。そういう矛盾した感情と行動を人は持っている。程度のこそはあれど、誰しもがそれを有している。
そこに自覚的になれるか、なれないか、という違いがあるだけだろう。僕はこうして、誰も読まない文章を書くくらいには、そういうものに自覚的になれていると思っている。
むしろ、その矛盾を少しでも理解するために、確認するように文章を書いている。文章を書くことで、僕は僕を理解する。そういうことだと思う。
それはきっと個人的な話であって、自分のための文章なのだが、どこかにそれを置いておき、誰かに読んで欲しいという気持ちがある。これもまた読まれたくないのに読んで欲しい、という矛盾を抱えている感情。
知られたらまずい、恥ずかしい、怖い。それは誰かの目の前で裸になる感覚に近いかもしれない。本当の自分をさらけ出すことなどたぶんできない。それは本当にきれいごとだと思っている。このあたりは「正欲」を読むと理解できる。本当に自分が好きなことなんてきっと他人には言えないのだ。だから僕だってこうして匿名アカウントで文章を書いている。
でも、それができたらきっと素敵だとは思う。実現することはないだろうそういった未来に希望を抱くことはできるし、それが尊いことなのだと思う。
そこに少しでも近づくことができるのがこのインターネットの良いところだと僕は思っている。あくまで仮面を被った状態で、自分の本音を、本心を少しずつ公開している。誰かが読んだのではなく、誰もが読める状態になっていることがここでは重要なのだと僕は思う。
誰も見ていないかもしれないけれど、さらけ出しているこの感覚がたぶん人生には必要なのだ。
フロイトだって、こう言っている。
そう、自分の秘密も他人の秘密も、結局守り通せないのである。誰かに話をしたくなるそういう性質があるのだろうと思う。秘密の内容が個人的であればあるほど、それを一人で抱え込むことに無理が生じるのだ。
だから、インターネットに公開する。
それでも、インターネットにも公開できないようなものもある。僕だってできれば読まれたくないけれど、一人では抱えきれないような秘密があったりする。過去に何度か宣言したことがあるが、有料noteをその倉庫にしようと思う。読まれたくない理由はたぶんさまざまだ。それは文章によって、秘密によって異なってくる。ただ、読まれたくないことだけは共通している。
この本を読んで、そんなことを考えた。この”秘密”というものに関しては、大学生の頃から上記のように考えている。
そのきっかけが「顔のない裸体たち」を読んだからだ。
かなりうろ覚えだが、秘密が人を成熟させるみたいなことが書いてあったようで、妙にこの部分だけが記憶に残っている。
昔から僕は厭世的なものに憧れる傾向がある。それをかっこよいと思ってしまう。僕の人生は全てかっこよくなることを前提に構成されているが、この厭世的な感じは他とはちょっと異質である。まず、自分ではそういうことは言わないし、出さない。
でも、ずっとそういうことを思っている。自分なんて本当にダメで、最低な人間だと思うことが結構ある。だからといって、別に病んだりはしないし、その最低なところも含めて、受け入れている。まあ、しょうがないか、という理解。妻子があるが、これは本当に恵まれた結果であって、そもそも結婚願望すら持ち合わせていなかった。
なかなか普段はその自分のダメさやクズさを表に出すことはできない。なぜなら、それは本当にダメな感じだから、やっぱりこれは知られたくないのである。その点、著者のことを僕は羨ましく思う。本当かどうかはわからないが、自分をあそこまでさらけ出すことはやっぱり尊い。そして、そのおかげで僕は勇気をもらうことができる。やっぱり読書、文章は素晴らしい。
ということで、僕も書こうと思う。iphoneのメモ帳にはそれなりに文章が溜まっていたりする。それを開放していこう。
読まれたくないので、強気の値段設定にはするが、これも最初は読まれたくないが強い一方、時間の経過とともに、読まれたいが勝ってくるかもしれない。この辺も自分の欲望を知る良い機会だと思う。
というそんなお話でした。
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