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フルーツタルトの誘惑

ついにやってしまった。

結婚して4ヶ月が経ちました。
とても仲良しな時期が今だけなのだとしても、この瞬間を楽しもうじゃないかという意気込み。
休日が合えば家でも外でもふたりで過ごし、まさにおしどり夫婦とはわたしたちのこと。

休みの日はなるべく一緒に過ごしたいと言うので、夫が仕事の日を狙って美容院へ。
その帰り、ひとり気まぐれに駅ビルの地下へ立ち寄ると
キラキラと輝くケーキと目が合った。
フルーツたっぷりのタルト、1ピース1000円はします。
買おうか、買わまいか。
悩みながらデザートコーナーを一周。
自分の分だけ買うのもなあ…。でもひとつ1000円かあ…。うーん…。

そしてまた、導かれるようにフルーツタルトの前へ。
買わなくっても一目見てから帰ろう。
すると店員さんが話しかけてきました。
「お伺いします」
それでもわたしは迷っていました。どうしよう。
店員さんに自分の存在を認識されてしまった焦り。
誕生日や記念日でもないのに、ケーキを見つめてしまった自分の弱さ。
年々増えている体重、基準値ギリギリの血糖値。
いろんな思いが巡ります。


「季節のフルーツタルト、ひとつください!」

猛暑で溶けかけのケーキ。
もっと冷やせば良かった。

ついに、やってしまいました。
1人分だけケーキを買うという所業を。
こんなことをするなんて、もっとずっと先の未来だと思っていました。
まさか、わたしが…。
しかしわたしも耐えました。
独身のときなら、ふたつ買って全部ひとりで食べていたので。
人って変わるものなのですね。


完璧な証拠隠滅のおかげか、ケーキを買って食べたことはバレていません。
幸いにも翌日は燃えるゴミの日だったのです。

そしてあまりにも似合っていなかったのでしょうか、
髪色をがらりと変えたことにも夫は気付いていないようでした。

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