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繰り返し

 また同じページを読んでいることに気がついたのは、本を読み始めてから体感で10分くらい経過した時だった。特徴的な描写と印象的な名前。そこで僕はこの登場人物を知っていることに気がつき、驚く。
 こんなにキレイに内容を忘れさせてくれる本は珍しい。別に文章が退屈なわけでもなく、登場人物に魅力がないわけでもない。それなのに僕の記憶には残らないのだ。
「呪いの本だな」
 この話を聞いた友人が気味悪そうな表情で僕に言ってきた。同じポイントで読んだことを思い出すのは、ちゃんとした理由がある。そこで読むのをやめてしまい、内容を忘れてしまうのはあくまで僕に原因がある気がしていたので、僕は黙って首を傾げた。
「まあそんな事はどうでもよい。また今年も仕事始めの次の日に、お前とこうしてお酒を飲めてよかったよ」
 ここ数年、僕は同じ友人と同じタイミングで会っている。
 繰り返される本の記憶の喪失と飲み会。これはもしかすると…。

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