こたつにみかん
本格的に冬がやってきた。猫の居場所が明らかに変わって確信した。過ごしやすい春や秋は退屈そうにだらだら歩いて、歩くことに飽きたら、その場に寝転びそのまま眠る。ただ、冬は自由気ままな猫でも寒さを凌ぐために眠る場所を固定する。日中は陽のあたる場所でごろごろして、夕方以降は毛布にくるまって眠る。
猫がこんな状態なのだから、当然、僕も寒い。
「例のものを出しなさい」
普段、机の上に乗ることのない猫が、行動で僕に語りかけてくるのだ。
僕は猫の気持ちに寄り添うために近所の八百屋に向かう。みかんを箱買いするために。
ここから猫と僕だけの特別な儀式が始まる。僕が買ってきたみかんの箱を床に置き、猫がその箱に乗って一鳴きする。その声を聞いて僕が箱からみかんを数個取り出して、小さなカゴのようなものに入れる。それをこたつの上に置いて、こたつのスイッチをオンにする。
こたつにみかん、そしてここは猫と僕の安住の場所。