偶然の散歩
目が覚めると最寄駅だった。眠たい目をこすりながらホームに降りて駅を眺めると、左手には階段と目印のポスターが貼られている。地下鉄のいつもの景色だ。改札を右に出て階段を登り地上に出ると、そこは最寄駅ではなく1つ前の駅だった。駅の形が似ていると噂には聞いていたが、違和感なく地上に出られたことに驚いてしまった。思わず自分に「いくら寝ぼけていてもこれはない」とツッコミを入れてしまう。
心を落ち着かせるために深呼吸をする。ちょうど良い気温とほのかに秋の気配を感じさせる心地よい風が、気持ちと足を軽くさせた。今の僕なら1駅分くらい簡単に歩ける。僕の足には羽が生えているから。そんなことを考えた。
地上の景色は何もかもが新鮮だった。たくさんの車が通り、銭湯のようなものもあったし、いつもUberEatsで頼んでいるお弁当屋さんの外観も見られた。偶然の散歩には、多くの発見がある。秋になったらもっと歩こう。