ザ・セル
◯です。
美術館が大好きな人間ですが、最近はより文化的な人間を目指し読書や映画鑑賞をマイブームに生きています。
アウトプットをサボりすぎて持ち腐れ感が悲しいので、今回は最近鑑賞した映画、ターセム・シン監督のザ・セルについてのお話をざっくりとしていこうかと。
世界観と映像の美しさ、設定も含めこの監督は綺麗だ。
あらすじ
シカゴ郊外にあるキャンベル研究所。若き心理学者キャサリンは人間の潜在意識や夢の中に入り込む技術を研究していた。そんな彼女のもとに、ガラス張りのセル(独房)に女性を閉じ込め溺死する姿を見て性的快楽を得る殺人鬼の心の中を覗いて欲しいという依頼が舞い込む……。 allcinemaより引用
まず、タイトルの「セル」について何を想像するでしょうか?
某ジャンプ漫画の人造人間?Excel?
僕は「細胞」を連想しました。おんなじ人も多いかと思います。
ですが、この「セル」は「独房」を意味しています。
「独房」とは物騒な意味です。ビバリウムの意味を知った時くらいちょっぴりゾッとしますね。
内容は上記の通りなのですが、要約すると水槽で溺死する様を見ることが好きな殺人鬼の脳内に入るお話です。
普通の人の夢の中がどうなっているのかは現状誰もわかりませんが、サイコパスの脳内はどうでしょう?
そこには美しくバイオレンスな、狂った世界が広がっていたのです。
ターセム・シンと石岡瑛子
お話を深掘りする前に監督について少々。
ターセム・シンはインド出身の映画監督です。
実はザ・セルはターセム・シンの初監督作品。初監督とは思えないクオリティであると個人的には思っています。
この監督の作品は何よりも綺麗。映像美がすごいです。「落下の王国」は僕の中で最も美しい作品であると自負しています。
今作にも、「落下の王国」の美しさの片鱗が見られます。
そしてこの監督の作品といえば、石岡瑛子のデザイン衣装です。
奇抜で力強い、血のような熱を感じる石岡瑛子の衣装と、ターセム・シンの作品は非常にマッチしています。この2つがおり混ざることで、不思議で美しい、でも何か不気味で拒否反応を抱くような世界観を創造します。
日本のデザイナーが名作を引き立たせているのは、なんとも嬉しい気持ちになりますね!
夢の中で
この映画の最も魅力的な見所は、その不気味なサイコパスの夢の中です。
夢の中はグロテスク。思わず目を覆いたくなるシーンもちらほらありましたね…。
ダミアン・ハーストの作品のようにされてしまった馬もいました。輪切りのソルベのよう、と言った方がわかる人もいるでしょうか…?
そんな場所ではありますが、構図的に見ても魅力はあったりします。
夢の中には少年時代の殺人鬼と、現在の脳内を体現したかのような狂気の大王が存在しています。
殺人鬼は現状に葛藤を抱いており、その迷いが少年時代の姿で現れているのだと思います。幼少期の水関連のトラウマが、彼を今に駆り立てていたのです。
狂気の王は豪華絢爛な玉座に座り、現状が正しいと言わんばかり。石岡瑛子デザインがめちゃくちゃ映えています。最高。
この対比構造もわかりやすく、魅力の1つでもあると言えます。
この夢はとってもデンジャラス。でもなんでだろう、綺麗なんです。すごくすごく。
パプリカとの関係性
さてこの作品。1993年に制作された筒井康隆の小説パプリカに共通点を見出しました。
そもそも夢の中に入って治療をする、という設定がパプリカにとても通ずるものがありますよね。
夢の中に入る主人公が女性、ピンチに助けに来るのは警察官。
ザ・セル屈指のグロシーンもパプリカに似通ったものがあります。水槽はザ・セル独自ですが。
夢が現実に干渉するなんてことは逆にパプリカ独自です。
結構連想する箇所があったので、ターセム・シンは筒井康隆に少なからず影響を受けていたのでしょうか?
どちらにせよ夢の可視化という共通点は、僕にとっては最大級のアイデアであり、SFにとって最高のスパイスなのでした。
夢を覗くということ
僕たちは夢を見ます。
正夢になりそうな夢。幸せな夢。理想の夢。不幸せな夢もあるけれど、夢のジャンルは様々。
夢占いで内心を暴くこともできます。本当かどうかは知らないけれど。
でも他人の夢を覗くとき、どんな夢が見えるでしょうか?
夢を覗くという主題は、よく不気味で狂気的なものとして描かれます。
例えば、ゆめにっきというゲーム。これは窓枠という女の子の夢の中をプレイヤーが覗き見ているとも言えます。
ザ・セルも同じくして鑑賞者が夢の中を覗いており、それは狂気的に描かれています。
でも不気味なものほど気になり、覗きたくなるのが人間です。それは興味となります。
その興味こそが、このザ・セルの魅力なのです。
他人の夢を覗きたい、という気持ちになった時にこの作品はオススメです。
夢の中を覗く時、嫌悪感を抱くのか、感動を抱くのか、はたまた罪悪感か。
それは夢見心地の自分にお任せしましょう。
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