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一休さん、虎が出てきた【400字小説】

「虎を屏風から追い出してください」と言われて、将軍様はぞっとしただろう。わたしはそれでも冷静だった。わたしの力があれば生きた虎を用意することも容易だったからだ、微笑んでいたほどだ。そんなわたしを見て将軍様は不敵に笑った。ゆっくり視線を一休に向けると「わたしの右腕が屏風から虎を解き放ってくれるぞ」と言って笑った。一休は大法螺と高を括ったのだろう、あははは~と大爆笑。鉢巻をして「さあ、追い出してください!」と叫んだ。それでわたしは奇声を発し、妖力を発揮。虎が屏風から飛び出た。その迫力に事態を把握していた将軍様も側近たちも一瞬怯えていた。虎は虎自身らしい大きな雄たけびを上げて、仁王立ち。じっと一休を睨む。一休は驚いてはいなかった。してやられたという感じの表情だった。それでこう言った。「残念ながら僕の負けです。どうか屏風に僕を閉じ込めてください」わたしは一休の誇りの高い心意気に今度こそ、ぞっとした。

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