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【血の粥】嵐の前の静かな喝采(49)

静寂を破って「終わったぞ」と誰かが言ったのがきっかけだった……、気がした。何十万年後に口を開いたかのような雰囲気で、誰もつぶやきにリアクションできない。弱ったコバートが立ち上がろうとしたがダメで、諦めて寝転んだまま「ムラ長のおかげだ」と息も絶え絶えに言った。「ありがとうムラ長様!」突然言葉を覚えた赤ん坊のように立ち上がってムラ民は拍手をしたり抱き合ったり涙したりした。

「わしはコバートにコツを教えたまで」

だが誰もコバートを褒め称えなかったし、当惑したのは当の本人。血の粥を食べ尽くして覚醒したと思い込んで迎え撃って、何も出来ずに撃退された。エコーが恐竜コウモリに襲われた時と同じだ。いや、それより酷い。右腕が腐っている。雷は思ったところで落ちてくれなかった。意のままにするには修行が足りないと自覚。悔しさと情けなさとでぐちゃぐちゃに。その時、或る家屋から火が上がっていた。ジャの住まいからだった。

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