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【血の粥】消えてしまっても描き続けられる才能(20)

ジャは上手に絵が描けた。たとえば燃え上がる炎や、深く美しいシカ、細かく粒々した太陽の光、白髭のムラ長が祈祷する姿……。土の上に描くので風が走ってくれば簡単に吹き飛んでしまう儚いものだが、それが逆に未来永劫を感じさせた。家族や友人に褒められたし、羨ましがられた。彼女以外にもそういう創作をする人物もいたが、よりその才能は際立っていた。嫉妬させないほど圧倒的な画力を誇ったのだ。皆が絶賛したが、特にエコーは他人とは違うアプローチで褒め称えてくれた。「そうやって消えてしまっても描き続けられることこそが才能だね」。その言葉は素直に嬉しかった。褒められたから好きになったのか、今となっては、わからない。それでも、絵はいつかやめなくてはいけないものだとずっと考えていた。炊事や洗濯や掃除をするのが人間らしい生活というものだ。消し飛んでしまう絵を描いて何になるとジャは葛藤していた。それでも絵はやめられなかった。

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