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【400字小説】DIVE! 深く潜れ

飛び込む姿が美しくなくて、どうにもならない。鍛え抜かれた体は自分でも愛おしいけれど、父は腹がビールだから将来はオレもあんな体型になるのだろう。因果からは逃げられないし、体重は二度と戻らないってドンマツオが歌ってる。

入水して深く潜れた。だけれど、気泡が多い、得点は芳しくないだろう。浮上しながら脳内会議。恥ずかしながら、板から踏み切るのは怖くて堪らない。死ぬのかと思ったことは一度や二度ではなくて、それはオレの技術が熟していないからだ。この競技を始めて12年になるのに、「まだ怖いのか!」って父に詰められる。そんな彼はオリンピック選手だったから、何も怖くなかったんだろうし、何者にでもなれたんだろうな。

父は凡人のオレには理解出来ない感覚的な伝え方で技を伝授しようとする。伝わるのは多分1割だけで、それでも強化選手になれたのだから、オレはある意味才能アリ? でも、もしかしたら七光りなだけかも。結果は3点だった。

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