ミスマッチ【400字小説】
相性が合わない。心も体も。結婚して5年だからまだ間に合う、離婚。子どもは1歳、イチロウは溺愛、女の子。親権は絶対に譲れない。逆にハユは冷めてる、覚めてる。結婚生活にかなりうんざり。子育てにはぐったり。精神疾患があって足を引っ張る。「別れようか」とはイチロウもハユも言えない。実は結婚生活5年だろうが10年だろうが20年だろうが、やり直しはいつだってできる。娘のことを考えたら、離婚は先延ばしにした方が良いのか。ある人は「今のうちだよ」とどちらでも取れる言い方で誤魔化す。好きな温泉旅行へも行けない。娘が小さいことを理由にして。結婚生活がうまくいかないのは、相手の努力が足りないせいだとお互い思っている、すれ違い。圧倒的に会話が足りない。言葉は大事だ。黙っていてもわかるなんて、幻想。「わたしたち(orおれたち)、相性が合わないんじゃないの?」って言えたら、次の恋が始まる。でも、実はそんな未来も怖くて堪らない。
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