ポンプ・フェイク【400字小説】
「あれ…まだいる」という漫画『スラムダンク』の名シーンを体現したカツノ。U18日本代表のヨダを見事にポンプ・フェイクで飛ばしたのに、ヨダはいっこうに落下してくる気配がない。落ちてくるのを待った、まばたきほどの間の駆け引き。その間に近いうちにアヤミと屋内プールに行こうと考えて、彼女の水着姿までも思い浮かべた。ギリギリまで我慢して、いよいよカツノはゴール下から得点を狙う。ヨダが重力に逆らえなくなかったからだ。これで確実だとカツノは瞬間的に感覚で確信、ボールを持った両腕を伸ばしてジャンプ・シュート。ところが空中で何もできないはずのヨダの長い腕が、まるで路地から飛び出してきた小学生男子のように現れて、カツノの懸命のシュートを弾き出した。ヨダは「どうだ」とにらみを効かせた。〇・〇五秒、目が合っていた。カツノの両目にアヤミが映って見えたから、すべてを見透かされてると思わざるを得ず、試合には勝てないと悟った。
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