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バックドア【400字小説】

目を離した隙に、息子のルイが消えていた。妊婦のハルコは気が動転する。でも、婦人服売り場には多数の商品が並んでいるので、おそらくその中に隠れたのだと予想。「ルイ、どこ!」と呼ぶ声が聞こえて店員ふたりが静かに駆けつけて来る。「息子が神隠しにあったんです」とハルコは。それで店員ふたりと必死に探す。でもいない。「警察に連絡してもいいですか?」と余裕がなくなったハルコは言うが、「まずは冷静になりましょう」と店員ふたりが。確かに警察を呼ぶには大袈裟すぎる。相手は4歳児。必死にかくれんぼしているつもりなのだろう。それからすべての商品の裏、試着室、念のためバックヤードを探したが見つからない。「店を出た可能性がありますね」といよいよ店員が焦り始める。すると我に返ったハルコが「すいません、まだ生まれていませんでした」と気が狂ったことを。店員は呆れるどころか恐怖し、気の毒にも思った。それから8日後に流産が判明。

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