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【血の粥】海と血の記憶(34)

幼い頃だったからどう海に辿り着いたのか知れない。エコーの家族に連れられて行ったと記憶している。エコーの父が早くに亡くなってしまったが、コバートもエコーでさえも、海を見られるということに興奮していた。それだけ小さかった頃。土葬ではなく、海辺での鳥葬を望んだエコーの父を見送った後に海に行ったのだが、コバートの思い出に鳥葬はない。美しい海と爽快な開放感に心躍った。海水は冷たくて透き通っていた。コバートもエコーも波打ち際で海水に濡れるか濡れないかを遊ぶようなことはしなかった。海が視界に飛び込むなり、減速した馬車を飛び降りて、海に向かって走り出し、そのまま波に突っ込んだほどだ。当然、ずぶ濡れだったが、そんなこともお構いなし。コバートは夢中だったのですぐ気がつかなかったが、足の裏に痛みが走ったので、のぞき込むと、ぱっくりと割れた傷口があって血が流れていた。海岸を駆けている際、貝殻か何かを踏んで流れた血。

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