【血の粥】考えないで感じる(39)
コバートは過去にその言葉を聞いた時、なんて愛がないんだとムラ長を蔑んだが、今では本当の意味がわかる。脳が痺れてボーッとしていたら、多くのムラ民が大河の流れのような呪文を唱えていた。海の波に乗るような気持ち良ささえもあって、ムラ育ちのコバートには初めて味わう感覚。耳心地が良く、眠気さえした。それは不思議な感覚。気絶するような苦しみが背中合わせで快楽と寄り添っている、そんなことに気づく。自分に起こっていることが実感できない。この辛さを認めたくない、すべてから逃げたい、そういう気持ちから実感のなさが生まれる。考えすぎて混乱している。感じることに重きを置かなくてはいけなかった。血の粥を食べながら、その生臭さを抱きしめた。まずすぎて、味わって食べられない、無理。ただ人間味を捨てる悲しみを感じる。これさえ乗り切れば、これから誰かの役に立てる。そう感じられることには安心していると言っても良かった、矛盾。
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