カチカチ山、たとえばたぬきが死んだら【400字小説】
「殺すつもりはありませんでした。でも、おじいさんやおばあさんに酷いことをしたたぬきに憎悪はありました。ただ、たぬきを殺そうなんて思わなかった。むしろ、殺すこと以上の苦しみを与えたかった。火を点けたことも溺れさせたのも、そういった気持ちからです。死刑ですか?殺すつもりはなかったとはいえ、それよりも強大な恨みを持ったことは、大きな罪かも知れません。そうですね、死刑は致し方ないことです。わかりました、裁判が終わったら殺してください。ただ、わたしは正義のために戦った。裁判長、あなたも大切な人を殺されたら、復讐を考えませんか。それが正義ではありませんか。わたしのおじいさんおばあさんとの関係は希薄だったって? あげ足を取るんですね。たまににんじんをもらう関係でしたよ。それでも殺意を覚えるきっかけになります。え、愉快犯? 笑わせないでください。確かに、そんな残虐なうさぎはわたし以外に存在しませんけどね」
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