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【血の粥】痛恨の一撃(3)

コバートは一瞬で恐竜コウモリの両脚で蹴られて、為す術なく吹っ飛んだ。何をされたのかコバートはすぐには理解できなかったくらいだ。あばらが砕けるほどの衝撃だったが、すぐに痛みは追いついて来ない。風よりも早く、高速で吹き飛ばされたのに、宙をゆったり舞っているような錯覚さえした。スロ~モーション。遠くに雷雲がうごめいて光るのを見たのは確か。風が湿っているのが、そんな状況でもわかった。雨が降るのは間近。死んだら無に還るだけだと悟った。無性に豆のスープを食べたいとなぜか思った。幻覚きのこで気持ち良くなりたかった。まだ先の収穫祭が待ち遠しかった。ジャの絵をまた見てみたいと感じた。エコーには早く逃げろと言いたい。コバートはようやく地面に叩きつけられ、十数メートル弄ばれるようにゴロゴロ転がった。それが終わる次の瞬間に猟銃が鳴るのを聞いた。エコーに「いいから逃げなきゃダメだ!」と叫びたかったが、声は一gも出ない。

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