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【血の粥】意識はすでになかった(52)

コバートは痛みと恐怖ですでに気絶。ピクピクと全身で痙攣して虫の息。意識を失う寸前に今までのジャのエコーに対する接し方を思い出し、鈍感だったなと余計なことを考えた。「死ぬ間際に思うことはこんなことか」と呑気なことを考えながら気を失った。すると猛スピードで吸血鬼のウイルスが全身に血を経由して駆け巡る。それと同時進行でコバートの体も燃え始める。最初は控えめだったが、突然爆発するように燃え盛る。ムラ民が悲しむ。ムラ長に至っては神の仕打ちにうちひしがれて、らしくなく、項垂れた。こんな時こそ堂々としていなければいけないとわかりつつ。ムラ長失格だと自責の念。不思議だったのは腐った右手で、まるごと全部燃えていなかった。むしろ、じゅくじゅくと熟れる果物のように湿っている。湯気が上がっているのは、その蒸気なのか。そのうち右腕は意思を持つように気を失ったコバートに反してバタバタと動き始める。曲がったり、うねったり。

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