【血の粥】伝えなくてはいけないこと(37)
野生動物はムラ周辺にいるが、儀式に捧げられるようなウシをムラでは飼っていない。花はあっても野花だ。マチの商人とに儀式に使えるウシや花を譲ってもらう。収穫した米や狩猟した珍しい獣(恐竜動物)と交換したり。華やかさのある祝日も生誕祭もない。あるのは死にまつわる葬式や儀式だけ。死は何よりも尊いとされている。でも、生きることも日々噛みしめているムラ民。子どもらの成長を喜ぶ。「平凡こそが幸せ」、そう思っている。ただ選ばれた者が人間から呪術師になる宴の《ことほぎの儀》は神々しい式。一方でムラ長の死やコバートの将来を断たれることを意味するものだから、厳かに執り行われる。コバートが血の粥に苦戦していることを知りつつ、非情な愛でムラ長は言う。
「獲物を狩って生命をいただくのももちろん、稲だって芋だって農作物を殺しているんだ。生きる、死ぬは《くらし》と直結している。これから呪術師になるお前はそれを伝えてゆくのだ」
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