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ボックス・アウト【400字小説】

ヤナギヤフトシは仕事が出来ないって自覚。だから、せめてもの思いで嫌がる仕事を率先してやる、人知れず。「ヤナギヤさん、また届けるはずのお弁当忘れていってるよ!」と配達に出て20分してからLINEが来た。続けて「社長が代わりに届けてくれるっていうから、謝っておいて」と連投されて息苦しくなる。このミスを引きずってはいけないので安全運転で走行。そうしたら配達のペースが遅れて、最後の届け先についた時にはタイムオーバー。お客さんに嫌味を言われて凹む。帰りは涙目になりながら運転したから、多分、心が病んでいる。フトシ自身は知らんぷりしてるだけ。定時で皆があがっていく中、フトシは誰にも頼まれていないトイレ掃除をした、ただの自己満足。すると不意に社長が現れて「ヤナギヤくんはいつもめんどくさいことをやってくれているね」と知らんぷりせずに言って、救われた気が。でも、お弁当を代わりに配達してくれたお礼をするのを忘れた。

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