【血の粥】復活の吸血鬼(56)
いつの間にかムラ民は逃げて誰もいなくなっていた。ムラ長が瀕死の一歩手前で倒れていた以外は。吸血鬼になりたての時と同じく、ジャは真っ裸で、汚れのひとつもなく、川で水遊びをしたあとのように肌はきれいだった。コバートはやさしく彼女に近づき、抱擁。その際に右腕がないことを否応にも感じさせられた。悲しくはなかった。ジャを人間に戻すことができて嬉しかった。でも、自分は吸血鬼だという思考は働いた。本当に悲しくはなかったのだろうか。彼の深層心理は、多分、後者で、再び噛みついてジャを同じ吸血鬼にしてしまいたいと思ったのだ。それを実行しようか迷っていたら、突然、ジャがコバートの首を噛んだ。まだ吸血鬼だった。血を吸われた。恍惚とした。不覚を取ったことをコバートは悔いたが、それでも不思議と喜びもあった。ジャに殺されるなら本望だと感じたのだ。しかし、それはひとときの間だけ。燃え狂うような苦痛に全身が襲われたのだ。
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