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55danyl
ヌ【400字小説】
「《ヌ》って、なんかエロい響きだよね」と未夏が言うから、そんなふうに思わない僕は「ひらがなの《ゆ》の字面の方が、よっぽど艶っぽいよ」と言い返した。
「どんなところが?」だなんて訊かれたけれど、感覚的な話だから理由なんてない。
僕のそういうところが未夏は気に食わないみたいで、喧嘩に。
実はそんなわけわかめな喧嘩が立て続けだから、もう付き合ってられなくて、別れを切り出そうかと。
でも、未夏はそれを第3の肌で察知したのか「ラブホ行こうよ」って今までにないアプローチを。
僕だって男だから断るのも粋じゃないし、まあ、それなりにエッチな気分にもさせられたから、その夜中、何回したかわからないくらいに、未夏とFU・RE・A・I。
疲れ果てた、多分、深夜2時くらいに、未夏が僕の背中に何か文字を書いた。
「なんて書いたかわかる?」と訊くので「ヌ?」と答えたら、その途端、またしたい気持ちになって、未夏の持論は正しかったんだって感覚的に。
❏❏❏