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才能【400字小説】

コロナ禍で米国から帰って来た
牧野にローリング・ストーンズの
良さを押し売りされて。

「ビートルズよりストーンズの方が
ロック界に与えた影響は多大」
なんて議論しつくされたことを。
帰国後の2週間の隔離生活について
訊きたかったのに一方的にミック・ジャガー。
俺は居酒屋の肉じゃがをつまみながら。

「ミック・ジャガーが
トレーニングしている姿が
SNSにあがっててさ。
才能だけでのし上がったんだと
勝手に思ってたけど、
そうじゃないないンだね。
血のにじむような
がんばりがあっての、今なんだなあ。
人生、願った通りになんていかない。
でも、ミック・ジャガーは、
信じ続けたんだね。
運も才能もあったんだと思う。
とはいえその努力がなかったら、
到底、この高みには来られなかった」

アツすぎて迷惑。
同じことの繰り返しで退屈。
でも、俺も酔っ払って
どうでも良くなった。
13杯目のハイボールを
口に運んで牧野は
「この肉じゃが、うめー」って、
とっくに冷めてるのに。

❏❏❏

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