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ターンオーバー【400字小説】

「大事な局面でエアボールを連発したのに、それでもシュートを打つことを恐れなかったコービーの心臓がすごい」
真夜中のファミレスでユイカとイロハは延々と話している。いや、うんうんとイロハは頷くばかりで。バスケのことはよくわからないが、ユイカの熱量が半端ないので聞けてしまう。
「わたしったらさあ、チキンだからパス出すのも怖くて、3回連続でターンオーバーしちゃってね、重要な場面で」
イロハは専門用語についていけなくて質問したいがその間をユイカは与えてくれない。
「マンバ・メンタリティっていう本を買って。4000円くらいするんだけど読み応えあって。見せてあげたかったけれど、試合だったから持ってくる余裕なかった、ごめんね」
エネルギッシュなユイカにイロハは圧倒される。マシンガントークを続けるから息継ぎができない。こんなふうにプレイすれば、今日の試合内容だって変わったはずだとイロハは思うが、一向に口を挟む隙がない。

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