【血の粥】大量のドーパミンが脳内を(5)
恐竜コウモリにもドーパミンが溢れ出ている状況は同じだった。今夜の獲物を得たと思ったら、見事羽を撃ち抜かれて、さらにそのうちの一発は肩の肉に食い込んでいる、形勢は逆転。狙った人間は瀕死一歩手前だというのに、置いていかねばならないことに屈辱を感じていた。知能のある恐竜コウモリは「チクショウ」といなないて、片方の羽を引き摺りながらズルズルと地上を這うようにして逃げ帰ろうとする。一方のエコーはそれも見ずにコバートの元へと走る。だが、ハッとして逃げることに必死で後ろ姿を見せている恐竜コウモリを仕留めようと試みる。荒い息と乱れ散るドーパミンのせいで腕が小刻みに震えていた。焦点が定まらないが呼吸に集中することで落ち着きを取り戻す。「雨が降るな」とつぶやいてトリガーを引いた。空はいつの間にか真っ黒だった。太陽が雲の後ろで窒息。弾丸は一直線に恐竜コウモリの後頭部を射る。祝祭の花火のように美しく弾け散った。
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