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dancefirst
ぶんぶく茶釜、性悪和尚の思考【400字小説】
あの茶釜がタヌキだったなんて思いもしなかった。金を稼ぐ茶釜だったとは……。古道具屋は大儲けしやがった。悔しいが百歩譲って許してやるとする。問題は茶釜姿のまま死んだタヌキを茂林寺に譲ったことだ。もとはわたしの茶釜だったのだ、わたしの寺に返すのが筋だろう。茂林寺に供養をお願いするとは許せない。このわたしが何をしたというのだ。それでわたしは怒りのあまり夜の茂林寺を襲撃。誰もいない境内に殴り込み、誰も殴らずに、無防備な茶釜を奪い返した。すっきりした。もやもやが晴れた。茶釜は多くの人に触られていて指紋がベタベタとついていたので布で擦ってきれいにしようとした。すると湯口からタヌキの亡霊が現われて「どんな願いでも叶えてみましょう」と言ったので「このわたしを大金持ちにしろ」と伝えた。そうしたら生きたまま茶釜にされた。確かに間違っていないけれども。金を稼ぐ茶釜になるとは思いもしなかった、これがタヌキの復讐か。
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