【血の粥】そうじゃなかったら、死ねたから不運(14)
生きることはラッキーなのか。死んだら安らかに眠れるのか。雨の音も聞けなくなる。風のぬるさや、土の匂いも嗅げない。祖母から聞いた神話、祖父から聞いた武勇伝。《ち》を受け継いでいることを誇りに思った。若いコバートはまだ子どもを持つような年齢ではなかった。子どもは育つまで時間がかかるから、せめてあと10年は生きなくては。今は恋をしている場合で、狩りもそこそこにすればいい。ましてや呪術師になるための鍛錬などしなくてもいいのかもしれない。選ばれし者なら強要も仕方ないが。ムラ長の個人的な思い入れでコバートに「才能がある」と言っただけとも、言えなくもない。食事には見た目にも栄養的にも、青い野菜が必要。良い狩りをするためには、質も量も十分な睡眠が必須。それらと同じようにムラにはコバートの能力が求められた、本人がどう思おうが。そんな勝手にコバートはうなだれて、助けが来た直後に、とうとう意識が深く沈んで、黙り込む。
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