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おおかみと7ひきの子やぎ、全員食べられたら【400字小説】

家に戻った時の凄惨な場面を思い出すと発狂してしまう。ここまでおおかみの仕業は酷いものなのかと恨まずにはいられなかった。かといってわたし一人では何もできない。ただただ泣く日が続いた。自分も責めた、もっとあの子たちにドアーを開けないでと言い聞かせることはできなかったか。もっと早く戻ってこられなかったか。次第にわたしは狂っているようだ。あの家はもう取り壊されて、親戚の家で住まわせてもらっている。そこは警備が万全でおおかみがやって来るわけがない。でも、たとえばトイレのドアーを開けたら、あの子が血まみれで倒れている幻覚を見るし、動物の遠吠えを聞くとおおかみだと思って、苛々と怖さと悔しさの思いに葛藤して動悸が酷くする。さっき玄関の扉を叩く音がして、穴を覗くとそこで元夫が待っていた。彼にも憎しみはあるけれど、玄関を開けて、思わず抱きつき泣いてしまった。

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