
Photo by
denwa_uranai1
ゾンビ涙色【400字小説】
赤ん坊の時だって記憶がない、泣いた。
母も「あなたは泣かなかった」って
いまだに気味悪がって。
そんな調子だから親の愛情は。
母はまずい料理を作ってくれるから
まだマシで、父はほかに女性を作って、
そっちの家庭ばかりに帰る。
映画監督なんてろくでもない仕事。
あんな陳腐な映画ばかりなのに、
毎回、日本中の1億2千万人を泣かせる。
バカみたい。
でも実は最新作『教養など必要ない』は観たい。
死んで光になった4人のさ迷う登場人物が、
ラストでようやく出会って、溶解し、
ビッグバンするっていう、不条理ナンセンスな。
かなり意味不明っていう評判。
興行収益的にズッコケること間違いなさそうだから、
ざまあみろって言ってやりたい。
ぶっ飛んだ映画が好き。
ジョージ・A・ロメロは偉大。
私の彼氏は医大生で、彼も泣かないし、無口な。
母に紹介したら泣くかな。
父は私に興味がない。
そんな事実には泣きたい気持ちになるけれど、
泣き方を知らないんだよね。
❏❏❏